じりじりと、焼けるような暑さの中、帝光中バスケ部は今日もハードな練習をこなしている。

ぼーっと、することもなく、一軍の選手を見ていると、なにかがきらきらと光っているのが見えた。
黄瀬だ。
黄瀬がきらきらしているのはいつものことだか今日はいつもと何かが違う気がした。
まあ、次の休憩のときにでも聞けばいいかと思い、自分の仕事に戻る。


「疲れた…」

自分の仕事に戻った途端にに、熱中症で倒れる人やら、怪我する人が続出して完全に人手不足に陥ったマネージャー業を一人でこなした私は黄瀬のことなどすっかり忘れてしまっていた。
ぐったりと壁に寄りかかりながら座っている私を気にかける人が一人もいないとはどういうことだと、心の中で悪態をつきながら膝に額をくっつける。
背中は汗でべっとりとしていて、一刻も早くシャワーを浴びたかった、しかし、帝光中にはシャワールームはあるものの、今はバスケ部の100人余りの人間が使っている。
全員が終わるのを待つのは少しめんどくさい、だけど今は女子更衣室までいくほどの体力も残っていない、三十分程休んでから行こうとぼんやりとした頭で考えた。

「あれー?名無ちゃんまだこんなとこにいたんスか?」
「あー黄瀬かー」
「うわっ、顔真っ赤スよ」
「今何時ー?」
「6時ちょい過ぎっスよ」
「うわ、やば」

早く着替えないとと思い、立ち上がるとぐらりと視界が揺れた、ずきずきと痛みだした頭に顔をしかめる。
ちかちかとする視界がぐらりと揺れて体が倒れていくのがわかる、黄瀬は私のことを吃驚した顔で見ていた。
固い体育館の床に思いっきり体をぶつけた、右半身が凄く痛い、黄瀬がこっちに走ってくるのが見えた、地面の揺れがダイレクトに頭に響く。

「う゛ぅ…」
「大丈夫!?保健室!?」

テンパりながらも私の身体を軽々と黄瀬は持ち上げる、私はもう言葉を出す気力すら残ってなくて、大人しく、黄瀬に身を委ねた。
最後に見たのは、きらきらと光りをうけて輝く、ピアスだった。


「ん゛ー」

ぱちりと目を覚ますと目の前に黄瀬がいた。

「あれ、なんで黄瀬」

起き上がろうとしたらずきりと頭が痛んだ。

「熱中症で倒れたんスよー?」
「まじでか…」

氷枕の冷たさが気持ちいい、
目線をずらすと、黄瀬の耳に光るそれを見つけた。

「あれ、黄瀬ピアスなんて着けてたっけ?」
「あ!これっスか?格好いいでしょ!」

満面の笑顔で言う黄瀬を見て、やはりこいつは犬に似ているなんて思いながら、ピアスに手を伸ばす。

「中学生なのにいけないなー」
「似合ってるからいいんス!」
「誰に空けてもらったの?」
「…ないしょ」

少し間を空けてそう言った黄瀬が妙に大人っぽくて、ぞくりとした。

「もうこんな時間だし、みんな玄関でまってるから行こっ」

そう言ってまた私を姫だきする黄瀬を見て、私はいつまでこいつに振り回されるのかとげんなりしたり、見慣れないピアスに何故か疎外感を感じてみたりした。
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