一目惚れした王子様は、まさかのチャラ男くんだった。そんな衝撃に耐えながら迎えたお昼休み。叔母さんに作ってもらったお弁当を片手に、さっちゃんの机へ向かう。そこにはさっちゃんとは正反対の「可愛い」という単語がぴったりの女の子が鎮座していた。

「名前ちゃん紹介するね!同じバスケ部のマネージャーをやってる友達ちゃんです」
「緑間友達です、どうも」
「あ、名字名前です…ん?みどり、ま?」
「あー…、たぶん思い浮かべてる奴は、私の従兄弟」
「従兄弟…なるほど」

中身までさっちゃんとは正反対の緑間さん(と口に出したら、友達って呼んでと怒られた)基、友達…ちゃん。こんなに可愛らしいのに、中身はクールビューティーとか、なんだここは。ギャップ人間の見本市か。そんなことを悶々と考えながら、2人とお弁当をつつく。うん、叔母さんのご飯はいつ食べても美味しいな。友達…ちゃんから美味しそうな玉子焼きを餌付けされているときだった。「さつきー」とさっちゃんを呼ぶ、男子特有の低い声にガバっと効果音付きで振り返る。懐かしい青い頭と記憶より大人びた印象の顔つきに、口元が緩むのがわかった。

「お前さ、俺の弁当ー…」
「大輝くん!」
「あ?………ああ、名前か」
「え、反応薄くないですか」

― 赤司から朝練中に聞かされたんだよ。
今はお前より飯が先だというオーラを出しながら、さっちゃんにお弁当を強請る彼、青峰大輝にほんの少しだけ凹む。もう少し、こう、さ。おぉ!元気だったか!みたいな反応があっても名前ちゃんはいいと思うんですよね。そんな考えが丸わかりだったのかどうかは知らないけど、「どうでもいいけど食べないの?」と玉子焼きを向けてきた友達ちゃんに返事をするかわりにぱくり。もごもごと口を動かしながら大輝くんの言葉を聞くこととする。

「んまぁ、バスケ部の連中には『世話の焼ける妹のような奴が転校してきた。そいつの世話もあるから、部活は早めに切り上げることもある』ー的なこと言ってたからな」
「私の厄介もの具合が半端ないね」
「あー、あとはなんだ。黄瀬とかに対する牽制なんじゃねーの」

大輝くんのその一言に私を除く二人は大きく首を縦にふる。大輝くん曰く、黄瀬くんは遊びも本命も厳選するから私が相手に選ばれるような事はないだろうけど、万が一に備えてじゃないのか、と。さらっと聞こえた失礼な言葉をスルーしつつ、さっちゃんからお弁当を受け取った大輝くんに手を振る。 さてさて、どうしたもんか。

「青峰くんにも言われちゃったねぇ」
「完全に私のこと貶しながらだったけどね」
「なに、なんかあるの?」
「えーっと、名前ちゃん言ってもいいの?」
「ん。もう言ってるようなもんだしさ」
「実はね…―  」

今朝の出来事を聞いた友達…ちゃんはおなかを抱えて笑う、笑う。この際だから、もう「ちゃん」なんてつけてやらねぇ!って思ってしまうような勢いで笑う。一通り笑った後、息を整えながら私の肩を叩いて一言。

「馬鹿っぽいなとは思ってたけど、なかなかだよ」

それが何を指すのか、さすがの私でも分かる。たったそれだけで黄瀬くんにほの字な私が単純だと、そう言いたいのだろう。失礼極まりないが、これは事実なのでぐっと口を噤む。

「さっき青峰も言ってたようにさ、どうせ厳選されちゃうなら当たって砕けてみたら?」
「えっ、やだよ!まだ転入初日なのに、学校に来づらくなるの無理!」
「そうだよ、友達ちゃん!それはさすがに…」
「遅かれ早かれ告白しても結果は一緒らしいし、先に当たって砕けて、夢から覚めた方がこれからの学園生活楽しめるんじゃないの?」
「うっ…それは、一理ある」
「ないから!ないからね、名前ちゃん!」
「夢見た期間が長いほど、夢から覚めた時が辛いんだから」
「だよね…うん、告白してみようかな」
「馬鹿か、本当に名前ちゃんっておバカか」

(120702)
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