今日は珍しく4人で帰ることになった。というか、互いが互いの利益を追求した結果、とでも言ったがいいのか。全員が自分の想い人の横に付きたいのが丸見えだ。ぐるぐると位置が変わりながら、たどり着いたファミレスの席順は…まあ、俺に有利、だ。


「さつき、何にするの?」
「チョコレートケーキにするか、チーズケーキにするか迷ってて…」
「じゃあ、私がチーズケーキにするから、さつきチョコケーキ頼みなよ」
「えっ、いいの?」
「うん、あーんってし合っこしよ」

目の前の彼女たちは見るからに百合百合している。下心があるのは俺の斜め前の彼女だけだろう。そんな彼女を見て、下心をたぎらせているのは俺の想い人なわけで。

「じゃあ私飲み物取ってくるよ。○何飲む?」
「んーっと、アイスティーで」
「了解ー」

すたすたと桃っちがドリンクバーへ向かう後ろ姿を眺める。なんであの子は俺なんかに惚れてしまったのだろう。悶々としていると、隣の黒子っちに「…僕も取ってきます。黄瀬くんは何かいりますか?」と問われたので「アイスコーヒー」と答えておいた。あれ、もしかして今、○っちとふたりきり?

「黄瀬…」
「ん?」
「あんたってさ、黒子くんのこと好きなの?」

直球どストレート、1ストライク。へ?なんて気の抜けた返事しか出来ない俺に○っちが追い打ちをかけるように「視線でわかるんだよ」だと。おいおい、それはお互い様だろう。あいてて、2ストライク。

「そりゃあ、大切な仲間っスから」
「仲間…ねぇ」
「…なんスか」
「仲間ではヌけない、よね?」

目の前の彼女…訂正、悪女は口端を上げて笑む。 ――なんで知ってんだよ。ぎりりと噛み締めた奥歯が痛い。あゝ、3ストライク、バッターアウト。「コーサン、その通りっスよ」へらへらと笑いながら告げると、だろうねだって。つくづくムカつく女だ。出されていたお冷に口をつけた彼女は、目配せし、とんでも無い爆弾を落とす。

「あんたは黒子くんが好き。私はさつきが好き。でもさつきはあんたが好き。」
「(ついでにいうと、黒子っちはあんたのことが好き)」
「私にとってあんたは邪魔な存在だけど、私にとってキューピットにもなれる存在。さらにいうと、私と黒子は仲がいいから、あんたのためのキューピットにもなれる」
「ふーん」
「さてさて、何が言いたいかお分かりかな?」

カラン。飲み干したお冷のグラスを傾けながら、ニヒルな笑みを浮かべる彼女にゴクリ、喉がなる。

「協力しろ…ってことっスか」
「That's right!」
「帰国子女、ウゼーっスよ」
「モデル君、本音出てるんだけど…まあ、共同戦線貼って行かない?お互いに不毛な恋愛してるんだし」
「いいっスよ、協力する」
「話がわかるイケメンね」
「セーカク悪いって言われないっスか」
「お生憎様、さつきにはいい女な○しか見せてないの」

ふふっと声を上げて笑う彼女にゾクリとする。今だけは心の底から思う、コイツが味方になってくれてよかったと。


 side:K

(120708)
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