世の中に許される恋と許されない恋があるとするなら、私は許されない恋をしているんだろう。恋愛は自由だなんてよく言うが、自由なんて最低限の義務の上でしか発生しないのだ。そして私の恋愛は、最低限の義務を果たしていない。故に自由が利かない。


「でね、きーちゃんってばタオル忘れちゃって」
「えー、でもさつきが黄瀬くんに代わりのタオル渡したんでしょ?」
「そうなのー!」

きゃっきゃとはしゃぐさつきはお世辞抜きに可愛い。化粧もほとんどしていない、されど頬に赤が注すのはきっと奴が関連しているからで。ふわりと笑う彼女につられるように笑うが、心では号泣ものである。さつきの口から一日に何度も出てくるその単語は、時に耳を塞ぎたくなるものである。塞げたら楽なのに、それをしないのは一番近くで彼女の笑顔を見れる特権を失いたくないからだ。

「でもねー、きーちゃんってばテツくんとばっかり遊んでてね」
「テツくんって…黒子くんだっけ?」
「うん。遊ぼうって誘っても、いーっつも「黒子っちとの先約がー」って!」

黄瀬と黒子くんが仲睦まじいのなんて、心底どうでもいい。それよりも何よりも、さつきが思ってた以上に肉食女子だった事に内心焦る。もしかして、この前誘ってくれたのは黄瀬に断られたからなのだろうか。そこまで考え、自己嫌悪。やめだやめだ、一人で考えても答えなんて見つかりっこないのに。

「でね、今度○にきーちゃんとデートってなった時のための服を見繕ってほしいの」
「デー…、ト」
「そう、デート」

からっからの喉から絞り出した声は思ってたより大きくて。精神的なダメージがそれ以上に大きくて。視界の端に捉えた黄色い頭を思わず睨みつける。 あゝ、コイツさえいなければ良かったのに。 くるっと視線をこちらに向けた黄瀬と思わず目が合ってしまったのは、ちょっと誤算だ。も一度さつきと視線を合わせ「いいよ」と笑う。いいのだ、今の所なら、さつきの一番近くにいるのは間違いなく私だから。

排他的な考えに陥ってると、ふと黒子くんとも目が合う。そうだ、早くあいつと黒子くんがくっついてしまえばいいのだ。馬鹿らしいかも知れないが、なんとなく黄瀬は私と同じような香りがするのだ。うん、くっついてしまえ。そしたらさつきは私だけのさつきになるのに。


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120703
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