未来は誰にもわからないけれど、変えることはできる。過去は誰にも変えられないけど、皆知ることができる。ただ私はそのどちらも出来ずに足踏みをしている。好きという気持ちは簡単に伝えられるのに、伝わらない。その矛盾に笑い出しそうになる。なにやってるんだろう。何言っちゃったんだろう。

後ろから聞こえる足音はさつきとは違うけれど、何処か聞き覚えのあるもので。期待して損しているはずなのに、妙な安心感を覚えてしまっていて。早く捕まえてくれたらいいのに。早くさつき達の元に戻ってくれたらいいのに。ぐるぐると回る思考回路の終着点は一体何処なのだろうか。ここに終着点は存在するのだろうか。

好きという気持ちだけで許される世界じゃなかった。好きという気持ちが全てを包み込む世界じゃなかった。たったそれだけのこと。綺麗なスクエアが一本ずつ剥がれ、崩壊してしまった。それだけのこと。私たちは気付けなかったのだ。そこが一方通行だったことに。振り向いてしまえば、たちまち正面衝突を起こしてしまうことに。

「○っち、待って」

繋がれない、結ばれない、不毛な恋。其処に花は咲かず、春は来ない。そこに光は射さず、明けない夜が未来永劫続く。涙の海は日に日に水嵩を増し、人々を脅かす。この街に平穏は訪れない

「待てっつってんだろ、この馬鹿」

さよなら、さよなら。しあわせが諸手を振って、雑踏に消えた。




(121209)
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