久しぶりにさつきと二人っきりで放課後デート、のはずだったが、いらんメンバーが増えてしまった。必死にさつきの隣をキープするも、互いが互いの想い人の隣へと移り変わる。目的地のファミレスでは、どうにかこうにかさつきの隣をゲット。
「じゃあ、私がチーズケーキにするから、さつきチョコケーキ頼みなよ」
「えっ、いいの?」
「うん、あーんってし合いっこしよ」
にっこり笑って、さつきの優しさに付け入る。下心ありありだ。彼女との間接キスは何度も行なっているが、これほど甘美なものはあるのだろうか。そんな笑顔を見抜いていたのか、黄瀬がなんとも言えない顔で此方をみていた。
さつきと黒子くんがドリンクに取りに向かったので、今現在テーブルには私と黄瀬の二人だ。さてさて、確信をついてしまうのもいいかしら、なーんて。
「黄瀬…」
「ん?」
「あんたってさ、黒子くんのこと好きなの?」
にっこりと笑って問いかける。目を見開いて「へ?」なんて返事返されちゃ、肯定しているようなもんだってーの。必死に隠しているようだけど、こっちには隠し玉があるのだ。ちらっと見かけただけだけども。
「大切な仲間っスから」
「仲間…ねぇ」
「…なんスか」
「仲間では、ヌけない、よね?」
こてん、と首を傾げるとギクッとした顔を浮かべる黄瀬に口の端を上げる。かく言う私も人のこと言えたような性癖ではないのだが。小さなため息を吐いた彼は「コーサン」と呟く。
「あんたは黒子くんが好き。私はさつきが好き。でも、さつきはあんたが好き。私にとってあんたは邪魔な存在だけど、私にとってはキューピットにもなれる存在。さらにいうと、私と黒子くんは仲がいいから、あんたのためのキューピットにもなれる」
「ふーん」
さて、何が言いたいか聡い彼にはわかっただろう。飲み干したグラスがカランと音を立てる。「協力しろ…ってことっスか」苦虫を噛み潰したような顔を浮かべて、こちらを見やる。
「That's right!」
「帰国子女、ウゼーっスよ」
モデルとは思えない顔をしたまま、本音をこぼす黄瀬。さてさて、不毛な恋愛者同士だ。祝福されるような結末には、どう転んでも向かわないのだ。
センチメンタルライク side:I
(120708)