はい、でました。恒例の「試合は名前ちゃんはバイトですよ」だ。今日からインターハイ予選が始まるってのに、シフトを組んだ竹田さんにヘッドロックをかけてしまいたい。私も生お父さんを間近で拝みたいなーなんて思いながら続けるバイトは最高に疲れた。疲れたったら、疲れた。

さらにバイト後に出たシフトに絶望する。どうやら黄瀬涼太効果らしく、週末は格段に忙しくなったらしい。なんてことをしてくれたんだ、黄瀬涼太。次の土日の休みまでを指折り数えて、リコ先輩にもらったトーナメント表を確認したとき泣きそうになった。調度良くなった携帯にはリコ先輩の文字。打ちひしがれながら電話を取って、応答する。

「も、しもし…」
『もしもし、名前ちゃん?無事初戦突破したわよー!』
「ほっ、ほんとですか?!おめでとうございます!」
『次もこの調子で頑張る予定だから』
「あの、リコ先輩、そのことなんですけど」
『ん?どうしたの?』
「私…準決勝の試合まで、土日の休みないみたいです…」
『え?』

* * *

私が部活に勤しんでいる間、我が誠凛高校は無事に準決勝出場を果たしたらしい。黒子くんに借りていた英和辞書を返しに彼らの教室へ来てみたら、筋肉痛に苦しむ彼らとご対面。ちなみに次は王者との2連戦が待っているらしい。

「黒子くん、これありがとう」
「いえ、お役に立てたのなら」
「…体、痛そうだね」
「ええ…もうバッキバキです」

談笑していると、教室の外から二人を呼ぶリコ先輩の声。私は関係ないかなーなんて思ってたら「名前ちゃんもー!ほらー!」だって。やたら重そうな荷物を火神くんに手渡した後、とととっと私の元へやってくる先輩。

「バイトお疲れ様」
「ありがとうございます」
「準決勝はこれるんだったわよね?」
「はい。観客席からでも見る予定です」
「なーにいってんの!アンタもベンチよ」

ぎょっとするような先輩の発言に目を瞬かせる。いやいやいや、あなたこそ何言っちゃってんですか。思い切り首を振って遠慮するも、リコ先輩の笑顔に圧倒されてしまう。ここは大人しく従うしかなさそうである。目的地までは右から左に流れるように、今度の準決勝でベンチに用意するものを教えられた。いや、先輩。メモぐらい取らせてください。

部活終了後、部室に明日必要なノートを忘れたことに気がつく。さすがに誰も居ないだろうと思ったのだが、そこからは小さな明かりが漏れていた。そっと扉を開ければ、テレビに釘付けの黒子くんと火神くんがいた。

「なーにやってんの」
「うわっ!!…ってなんだ、名字か」
「私で悪かったですねー…なに見てんの?エロいの?」
「ちげえよ!」
「次の相手の正邦の試合ですよ」

にゅっと出てきた黒子くんが教えてくれたDVDの内容。なるほどなんて考えつつ、目的の物を片手に彼らの隣に座る。じっと画面を見つめていればわかる、次の相手の圧倒的な強さ。それと、妙な違和感。

「なんか動き、気持ち悪いね」

そう呟いたとき、2つの頭が縦に動いたのが見えた。思案顔した彼らを見ていると、次の試合、一筋縄では得点は取れそうになんだろうなと考えてしまう。勝って欲しい。一日でも長く彼らの夏が続くように。そのために私もできることをひとつひとつやっていかなければ。

(120804)
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