「…キセリョウタ?誰ですか、それ」

駅前のカフェでのバイトも決まり、週に2度ほどバスケ部にお手伝いに行くようになって数週。先日、私がバイトへと足早に帰った後、キセキの世代とやらで一番下っ端がバスケ部の黒子くんを攫いに来たらしい。しかも、その下っ端くんは『キセリョウタ』という爽やかさ漂う名前なうえに、今をときめくモデルらしい。

と、ここまでは全部同じクラスの友人から聞いた話。そして今はバスケ部の主将とリコ先輩が目の前にいる。

「ほらー!私の言ったとおり!名前ちゃんは黄瀬くんの事なんて知らないって!」
「…名字、キセキの世代に関しては中学時代はバスケ部と縁がなかったから知らなくてもいいとはいえ、モデルに関しては知っててもいいんじゃねぇのか」
「なんかよくわからないんですけど、先輩たちは私を馬鹿にするために呼んだんですか?」

あ、ごめんごめん。と毛ほども謝る気のない謝罪をしながらリコ先輩がとりだしたのは、今週末に海常で行われるという練習試合についてのプリントだ。印刷して配るんですか?と問うと首を横にふられてしまった。

「名前ちゃん、今週末バイトは?」
「ない…ですけど」
「じゃあ暇ね」
「そこは暇かどうか聞いてください!」

ぶつぶつと文句を垂れていると、日向先輩がそっと肩を叩いてくれた。なんですか、同情するならさっき馬鹿にしたこと撤回してくださいよ。

「それでなんだけど、海常との練習試合についてきてほしいのよ」
「…はぁ」
「そこは驚かねぇのかよ」
「いや、そんな予感はしてたので」
「といっても、マネージャー要員ではないのよ。誠凛の試合って名前ちゃんは一度も見たことないでしょ?」
「そうですね、紅白試合程度しか」
「せっかくの強豪校相手だもの。いつものお礼よ」

バチコンとウインクをするリコ先輩に日向先輩の苦笑い。 あ、これはそれだけじゃないぞ。きっとドリンク作りとかやらされるんだ。 私の中の本能がそう告げた。

しかしながら、彼らの試合を見たことないのも事実。せっかくのお誘いだ。ありがとうございます、と小さくお礼を告げると二人は優しく微笑んでくれた。

どうせ週末は暇だし、ふんっだ。

(120624)
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