退屈な授業を聞き流しつつ、携帯に目を落とす。薄暗い机の下で光るディスプレイに写った、最近できた「彼氏」と呼ぶ存在は学校も違うし、部活だって違う。たまたま応援に行ったバスケの試合で一目惚れし、勢いのまま告白して今に至るわけだが。果たして、彼は私のことを好きなのだろうか。流されるように至った現実を嘆いてはいないだろうか。

メール受信を知らせるイルミネーションにあわてて携帯を操作する。送信者欄の名前を見て、胸が暖かくなったのは気のせいなんかじゃない。ぶっきらぼうなメールも、全てが愛おしい。久しぶりのお誘いに了承した旨の返事を送り、放課後のことを考える。嗚呼、退屈な時間がきらきら輝きだした。


「待った?」
「いや、さっき来たとこ」
「…少女漫画みたいな返しだね」
「うるせぇよ。おら、行くぞ」

二の句を継げるまえに差し出された手に、自分のそれを重ねる。横並びではなく半歩先を歩く姿が彼の強引さを伺わせて、胸元がむず痒い。この感情をなんというんだっけ。あ、幸せか。

「どっか行きてーとことかねえの?」
「ないよ。大輝くんと一緒ならどこへでも」
「…お前さ、そういうの狙ってんの?」
「なにが?」
「いーや、別に。名前が特にねーってんなら、バスケしに行くぞ」
「バスケ、かあ」
「嫌か?」
「ううん、行こうか」
「おう」

不安そうに此方を見やる彼に『嫌だ』なんて言えない。バスケは好きだけど、嫌い。どんな時だって彼と一緒にいれて、彼を最高の笑顔にできる其れは私にとって強敵なのだ。彼が好きなモノを好きになることが一番いいのだが、そういう理屈では覆せない気持ちというものもあるというか。ぼんやりと足元に目を向けながら歩いていると、クッと後ろに引っ張られる感覚。いつの間にやら彼は立ち止まっていて、そんな彼を私は追い越してしまっていたらしい。「どうかしたの?」と問えば、渋面を浮かべ頭をかく。

「あのさ、無理すんなよな」
「無理?」
「あー…、幼馴染に言われたんだよ。もっと恋人らしいことしてやらなきゃ、彼女が可哀想だーっつって」
「恋人らしいこと…」
「俺らさ、学校だって別だし、ただでさえ会えねえじゃん」
「…うん」
「つっても、俺、デートスポットなんて知らねぇし。色々考えたんだけど、家でもいいか?」
「うん」
「あーっと…DVDでも借りてさ」
「そうだね、うん」

なれないことをしている自覚があるのだろうか。ぽりぽりとかかれた頬は赤く染まっている。『本当に私のことが好きなんだろうか』なんて疑心暗鬼してた自分が心底恥ずかしい。こんなにも私のことを考え、思ってくれているのに。繋がれた手にぎゅっと力を込めて微笑めば、ほら。目の前の彼も幸せそうに笑ってくれるじゃないか。





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▼心愛様リクエスト
他校の彼女と青峰くんの切甘なお話
リクエスト有難う御座いました。
120721
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