「大ちゃんはバスケ部だけど、私は茶道部だから」「知ってる」「帰りの時間が合わないのは仕方ないの」「まあ、普通はな」「だから1人で帰ろうと思って」「…俺さ、お前に待ってろっつったよな?」「何を?」きょとん。小首を傾げる名前の可愛さで世界は救えると思う。よく晴れた日の木漏れ日は名前の持つ空気にぴったりで、そよぐ風は汗ばんだ肌に心地よさを与える。 なんてことは至極どうでもいい。今回起こってしまった問題にひどく腹を立てる俺とは異なり、目の前の彼女のあっけらかんとした態度は尊敬に値すると思う。「何を?じゃなくて。お前さ、俺と帰らなかったからナンパされて拉致られそうになったって自覚ある?」「ナンパ?あの人は道に迷っているようだったから」「だーかーら!それがナンパの手口だっつってんだろ」会話は先程から同じ話題をループしている。そもそも目の前の彼女が悪いのだ。互いの部活が違うとはいえ、基本的に終了時刻は学校で決められている。多少の遅れがあったとて、待つ分には苦にならないと思うのだが。彼女はどうやら違うようである。というか、根本から違うのだが。「私なんかナンパする人いないよ?」「いただろ、実際問題」「たまたまだもん」「そのたまたまがいつ起こるかわかんねぇだろ」「大ちゃんを待ってろってこと?」「嫌なのかよ」「カレカノみたい」「みたいじゃねーよ。俺はお前の彼氏だろうが」そうだっけー?とはにかむ彼女のでこをピンっと跳ねる。すぐに痛いと口をへの字にした彼女は見ていて本当に飽きない。四六時中、ずーっと視界に入れて表情の変化を楽しみたいほどに。「じゃあ、彼氏さんの言うとおりに今日は待ちます」「今日はじゃねーよ。ずっとだろうが」「約束破ったら?」「ベロチューの刑」ヤダーコワイーって、全然怖がってねーだろうが。きゃいきゃい騒がしい唇を掬い取れば、ぴたりと静かになる。したり顔で除けば「反則」だと。おーおー、そっちからキスし返すのは反則じゃないのかね。



(他人に言わせりゃただの惚気だとか)

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▼ゆか様リクエスト
青峰くんが天然ヒロインちゃんに振り回されるふわふわなお話
リクエストありがとうございました。
120717
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