一つまみにも満たないあなたの愛だって、私は全力で返したつもり。だけどそろそろ、潮時かも知れない。あなたの愛がね、たった、もうほんの小さな粒も感じることが出来ないから。
ドアが開く音がする。あぁ、また『私』を作らなくちゃ。いつもの、明るい、笑顔の私を作らなくちゃ。私が少しでも拗ねたり、悲しい顔したり、むすっとしたら、あなたは決まって心底嫌そうな顔をする。(悲痛なくらいに顔を歪めて、ね。)あー、足音が近づいてきた。名前、Smileよ。
「おかえり、翔一」
「あ・・・、おう。」
"なんだ、お前、いたんだ"みたいな顔。(すいませんね、居ちゃって。でもここが私の家なんですけど・・・。)
ねぇ、私は仮にも彼女のはずよ。
そんな言葉を飲み込んで、『ご飯は?』と聞けば『あー、食ってきた。』との決まり文句。(だろうね。さっきから他の女物の香水の匂いがぷんぷんしてるもん)(今夜も私の料理はゴミ箱行きみたいだ。ごめんね、料理さん)『そっか・・・』なんて私の中のマニュアル通りに言い返せば『ごめんな?』と髪に指を絡めてきた。(あー他の人を触ったあとの手で。)
「別にいいよ、気にしてないから。」
「ほんまごめんな・・・。」
「ていうかさ・・・もう、やめない?」
「え?頭撫でたらあかんの?」
「違うよ。
恋人ごっこ。」
Tell A Lie
−最後くらいは『愛してる』と嘘をついて欲しい・・・なんて、ね。−