ドンっという、耳に響くような音と背中に感じる痛みに、自分の状況を再確認する。目の前にはお得意のポーカーフェイスを浮かべる氷室くん。笑みを浮かべているようにも見えるが、目が笑っていない。そして私の両隣には彼の両手がこんにちはしていて、どうにも身動きが取れない。「えーっと…氷室くん?」「なんだい?」「いや、この手をどけてほしいなって」「どうして?」「どうしてって…」もごもごと呟く私の声がやたらと響く、放課後の教室。重心を移動させた時になったフローリングの音さえ、耳に大きな音となって届く。「名前は、どうして俺の事を名前で呼んでくれないのかな」「だって、恥ずかしいし…」「じゃあ、なんで敦のことは敦なの?」「敦くんは…敦くんだよ?」そういう事じゃないんだけどなぁ。困った顔をする目の前の彼を見上げ、思わず自分の眉も下がっていく感覚がする。少し首が痛いな、なんて考えが巡った時に彼の額が私のそれにコツンと当たる感覚。「氷室くん?」「辰也」「ひむ」「辰也、でしょ」「…辰也くん」今度は目まで笑った顔を見せる。それに安堵するも束の間、唇をさらわれてしまう。「名前は俺の彼女でしょ?」「そうだけど」「だけどもなんも、なしだよ」息をすることも忘れる程の口づけは、嫌でも彼という存在を感じてしまう。彼の後輩のことを名前で呼んでしまってるだけなのに、嫉妬してしまう彼こそ本当に可愛い。


ルゥジュ
舐め取られる唇にもう一度だけ名前を囁く


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▼那智様リクエスト
放課後の教室で氷室くんに壁ドンされるお話
リクエスト有難う御座いました。
120716
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