今日のラッキーアイテムは花の髪飾り。だがしかし、うちの高校はやたらと校則が厳しい。そっと鞄にさし、玄関を出る。気分よく通学路を歩いていると、小石に躓いたような感覚。とっとっとっ、リズムよく足が縺れ、前を歩いていたであろう人影にダイブ。 …あーれま、リップクリームが学ランに。

「…一体何なのだよ」
「ごめんなぁ?!みっ、どりま、くん…」
「またお前か、名字…」

振り向きざまにメガネのブリッジを上げ、思い切り溜息を吐かれる。あーあ、ラッキーアイテムのくせにアンラッキーを呼び込んでくるなんて。とほほ、なんて思いつつ、次の句を待っていると、いつものようなセリフをはかれた。

「全く、お前と俺の相性は最悪なのだよ」

* * *

「高尾くん、名前はもうダメです。次また同じ台詞を吐かれた時、それは名前の最後です」
「なーに言ってんだ、お前ぇ…」
「日に日に緑間くんに嫌われゆく名前に何か一言」
「ざまあねぇな」
「ひどい!」

教室の机でへばっている私という屍に追い打ちをかける、想い人の相棒。くすくすと笑いながら、伏せいった私の頭を叩く高尾くんをキッと睨み上げれば、手を止めたが、笑うのは止めない。

「はあ…おは朝の嘘つき…」
「あ?名字、おは朝みてんの?」
「うんー…ラッキーアイテム確認したりしてんのー…」

今日のアイテムはこれー。そう言って、高尾くんに今日のラッキーアイテムを見せると、そこには目を見開いた彼の姿。そんなに花の髪飾りが珍しいのもなのだろうか。くるくると回していると、手首をがっちり止められた。

「えっ、なに?」
「お前、まじで言ってんの?」
「は?まじもクソもないわよ、私はおは朝ラブですー」
「…ふーん。ま、高尾くんが一肌脱いであげますかねー」
「何の話しよ。脱ぐとか、公然猥褻罪で訴えるよ」
「ちげぇよ、バカ」

先ほどとは違い、ぽんぽんと優しく頭を叩かれる。全くもって何のことだかわからないのだが、ここは高尾の提案に1つ乗ることにしておこう。





「真ちゃーん」
「なんなのだよ、高尾。うざいぞ」
「相性が悪いと嘆いてた名前との共通点を見つけてきた和成くんにそーんなこと言っちゃてもいいの?」
「…すまなかったのだよ」
「はい、どーも。っと、実は彼女、真ちゃんと同じおは朝信者みたいなんだよねー」
「なに?!…あ、あいつもなのか」
「そーそー。今日は花の髪飾り持ってたんだけど、それがラッキーアイテムだとかなんとか」
「名字もおは朝信者、名字と同じ趣味、名字と…」
「ってー…、聞いてる?」






放課後、廊下をひとり昇降口へ向かい歩いていると、後ろから声をかけられた。また担任にいらぬことを頼まれてしまうのか。そんな事を考えつつ振り向くと、そこには今朝「お前との相性は最悪だ、バーカ」と告げた緑間が。(多少の過大表現があるが、まあ、それだけ私は傷ついてしまったってことで。)

「た、高尾から聞いたのだが…おは朝を見ているってのは本当なのか?」
「え?うん、毎朝欠かさず見てるけど…」
「今日の蟹座の運勢はわかるか?」
「えー…、確か3位でラッキーアイテムは同じ趣味を持つ人…だったかな。アイテムってかパーソンだけど」
「俺も、おは朝を見ているのだよ」
「へー、そうなんだ」
「…鈍感め、これだからバカは嫌なのだよ」





「だから!誰がバカよ!」「名字だと言っているだろう。これだけわかりやすい事言っているというのに」「なにが!」

遠くからうっすらと聞こえる応酬に頭を抱えたくなる。せっかく互いにそれとない助言を贈ったというのに、この始末だ。彼らが素直になる日は来るのだろうか。

「何度も言ってるだろう!今日はお前が俺のラッキーパーソンなのだよ!」「はぁ?!」「だから、今日は一緒に帰れと言ってるのだよ!」「ちょ、ちょっとまって…えっ?えっ?!」「たた、他意はないのだよ…お前が今日はラッキーパーソンに当てはまる人間だったからで、別に名字じゃなくとも」「ううううん…わ、わかってるけど…」

あーらら、二人して顔真っ赤に染めちゃって。さてさて、これは見なかったことにして、さっさと帰ることにしますかねっ、と。



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▼ハル様リクエスト
緑間くんとおは朝信者なヒロインの不器用な恋愛のお話。
リクエスト有難う御座いました。
120716
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