この世に二度目の生を受けたような感覚は、あながち間違いではないようだった。現に私は二度目の中学生を堪能している。一度やったことのある授業というのは退屈でしかなく、授業は真面目に受けた試しがなく。でもテストの成績はいいなんて、一番教師の反感を買うような生徒になってしまったのは言うまでもない。
さて、私が通う中学校にはキセキの世代なんてトンデモバスケ集団がいる。カラフルな頭と類まれなるセンスは人々の注目の目を掻っ攫う。そして、そんな彼らの愛を一身に浴びる子がいるのだが。彼女はたぶん、私と同じような人間なんだろうな、と。長年の、二度目の人生の勘が働いた。いわゆる同族嫌悪ってやつでなのか、彼女と私が接触したことは数回しかないのだが。同じクラスなのに、だ。

「名前ちーん」

呼ばれた方向を振り向けば、男子のクラスメイトよりも明らかに高い所に有る目がこちらを見ていた。「どうしたの」と返せば、人目を憚らず思い切り抱きついてくる。彼…、紫原敦もキセキの世代の一人だ。

「何かあったの?」
「別に〜」
「嘘は良くないよ」
「…アイツのこと、なんか見てるともやもやするからキモチワリィって言ったら、みんな怒んだもん」

音にするならばブッスーという言葉がピッタリと当てはまる顔で彼は呟く。アイツ、というのは大方彼女のことで間違いないのだろう。なぜそんな事を言ったのかと問えば、自分たちを見る目が盛りのついた女豹のようだからだと。あながち間違いではないのだろう。だって彼女は神に愛された者だから。彼らに愛されるよう仕向けることなんて容易いのだ。

「俺、名前ちんがいい」
「そう?」
「うん。アイツなんかより、名前ちんがマネジやってよ」
「あら、ありがとう。でも私は適任じゃないわ」
「…けち」

不貞腐れた敦の頭を撫ぜてあげると、気持ち良さそうに目を細める。なんだか気をよくしてしまった私の手はやめることを知らず、ひたすらに彼のさらさらの頭を撫でていた。すると、どこからか感じる射るような視線。ふっとそちらを見やれば、キセキのお嬢さんが、それはそれはすごい形相で此方を睨んでいた。

(なるほど、逆ハーってやつに敦が必要なのね)

不機嫌になった彼らのお姫様の機嫌を必死にとるキセキの世代とやらは、なんだか滑稽だ。彼女も、彼らも、せいぜい一時の魔法の時間を楽しめばいい。

「また名字のところに紫っちいるっス」「あいつなんかより、お前のほうが可愛いのにな」「全くもってその通りなのだよ」「お前が気負いすることも、悲しむこともない」「そうですよ、貴女は誰より可愛らしい方なんですから」「みんなありがとう」

綺麗に弧を描いた顔と聞こえてきた会話に吐き気がする。本当にバカらしというか、なんというか。敦がいないことでそんなに心痛める必要もないだろう。両手にあふれんばかりに侍らしておいて。彼らにも失礼だと思う。とはいえ、私も二度目の人生だが、まだまだ若い。言っても人だし、それなりの欲求というものもある。

(あなたに敦は勿体無いの)

ふふっと笑えば「名前ちん、なんで笑ってんのー」なんて彼の声。「敦のこと好きだなって思っただけよ」と返せば満足そうに笑む。あの子も、彼らも、造られた愛に翻弄されるなんて全くもってかわいそうだ。私と敦はこんなにも本物の愛で繋がっているのに。でも…暫くはクラスメイトAとして楽しませてもらおう、かな。



(あなたはなあんにも、ね)


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▼阿羅鷹様リクエスト
転生した精神的大人の夢主と紫原が逆ハー補正っ子とそれを取り巻くキセキの世代を傍観するお話。
リクエスト有難う御座いました。
120713
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