「名前ー」「…」「名前ってば」「…なに」待ちません、というような速さで前を歩く彼女に声をかける。振り向いた彼女の眉は思い切り顰められている。「いい加減、ちゃんとした返事チョーダイってば」へらっと笑って声をかけると「何度も言ってるじゃん、無理だって」だと。あーあー、こんなにも本気なのにどうして伝わらないんだろうか。普段の素行を思い返せば、答えは簡単に出てくるのだが。そんな俺の気持ちとは裏腹に、思わず掴んでしまった手を離せとばかり振り回す彼女。どんな彼女も好きだと言える自信はあるのに、彼女が俺の前で笑ったことがないのも事実。いつか俺も彼女を笑わせることができるのだろうか。好きだな、ああ、本当に。「好きだよ」「…」「ほんとに、まじで」掴んだ手にぐっと力がこもる気がした。「知ってるわよ」小さな呟きに、へらっと、また笑ってしまった。「私、高尾のその笑い方嫌い」「え?」「本当に私のことが好きなら、私にはちゃんと笑いなさいよ」ムスッとした口調で告げられる言葉は、俺の心にスッと入って、奥底を抉る。「他の女の子に見せるような笑顔だけじゃ、私は落とせないよ」ふっと咲いた、彼女の笑顔に胸は高鳴るばかりである。「望むところ…ってやつだね」


を吐いて、を吸う


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▼きよ様リクエスト
チャラいけど一途な高尾くんのお話
リクエスト有難う御座いました。
120713
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