高校ん時に告白して、付き合って。大学は別々になったし、何度か別れの局面を迎えたりしたこともあった。色々と思うところはあったけど、なんだかんだ付き合い続けてて、気が付けば互いに結婚適齢期ってやつだ。周りもどんどん結婚していくなか、結婚したくないのかと問われればそういう訳じゃなくて。なんとなくずるずるしてしまっているのだ。そして、今日は笠松先輩の結婚式。俺らの顔を見るなり「まだ結婚してねぇのか」と笑った先輩は、昔の女性恐怖症のような面影は一切無くて。幸せなんだろうな、と実感せざるを得なかった。

「笠松先輩、幸せそうだったね」

披露宴の帰り道、名前がぽつり呟く。同じようなことを考えていた恥ずかしさからか「だな」なんてそっけない返事しか出来ない。少しだけ引きずったような俺の足音と、高めのヒールを施したお洒落な彼女の足音が重なる、午後10時。

「奥さんも幸せそうだったね」
「綺麗な人だったな」
「うん。ドレス似合ってた」

思い出し笑いをする彼女の横顔は何処か高揚している。こういうところは…やはり女子といったところなのか。純白のドレスと長いヴェールは夢見る乙女たちの心を刺激するようだ。音にするならばルンルン、といっているような声色で新婦のドレスのこんなところが良かっただの、ああいうヘアメイクは綺麗だの、女性特有の目線から今日の感想を話す。

「はぁー…でも先輩も結婚しちゃったかー」
「んだなぁ…あとは誰が残ってるんスっけ」
「えーっと、青峰くんと紫原くんと黒子くんは結婚済みで、赤司くんとこはこの前子供生まれたんだっけ?」
「そうスよ、女の子」
「うあー!いいなぁ、きっと奥さんに似て可愛いんだろうなぁ」
「赤司っちも美形だから美人さんなのは間違いない」
「言えてる。あとはー…、緑間くんはまだ独り身だ」
「お医者さんは忙しいっスから」
「そうだよね。海常だと…森山先輩はあっという間で…」

指折り数える既婚者の数。圧倒的にその数が未婚者数より多いのは、それだけの年月が過ぎ、そういう歳頃に入ってきているのだと再確認できる。なんてったって、昔の仲間達には子供がいる家庭だってあるのだから。まあ、いてもおかしくない年齢なのだが。

「ねぇ、名前」
「なにー?」
「ドレス、着たい?」

零れ落ちるように出た問に、時間が止まる。ほんの僅かに見開かれた瞳は驚きの色を隠せないでいるのがわかって、無性に鼻の頭をかきたくなった。

「…そりゃ着たいよ。女の浪漫ってやつだよ」
「じゃあ近々着ないっスか?」
「やだよ、結婚前に来たら婚期遅れちゃうっていうし。これ以上遅くなっちゃったら取り返しつかないよ」

緩やかに弧を描く瞳は情けない笑みを浮べている。  ああ、そういえばこの子は直球じゃないと伝わらない女の子だったっけ。  懐かしい胸騒ぎは引き出物袋を持った手に汗をかかせるには十分だ。

「俺が着せるって言ってんスよ」
「どういうことよ」
「結婚しよ」
「…誰が」
「名前が」
「だ、れと…」
「俺と」
「……ん、とに?」
「ほんとに」

俯いた声は細く震えている。泣いてるんだなって、オンナに疎い人間でも分かってしまうサインは酷く脆い。小さく深呼吸をした彼女はすっと顔を上に上げると  「遅いよ、ばか」  とだけ言って笑った。




彼女の嬉し涙で濡れる僕の左手とそんな僕の手を握る彼女の左手に同じシルバーが光る日は目の前だ。

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▼柚心様リクエスト
長い期間付き合ってて、結婚してもいい年齢なのにイマイチ踏み出せずにいる状況からプロポーズするお話。
リクエスト有難うございました
120712
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