しょっぱいお菓子も好きだけど、甘いお菓子も好きだ。だけど何より『あっくん』と呼ぶ彼女の声が一番甘くて、どんなお菓子よりも好きなのかもしれない。

「あー、また名前ってば、赤ちんと仲良くしてるー」
「やあ、敦」
「あっくん!遅かったねー」
「遅かったねーじゃないってーの…」

名前のことはポテチトップスと同じくらい好き。ポテチトップスはしょっぱいやつが多いけど、名前は甘い。どちらにも共通することは、まったくもって飽きが来ないところだろうか。赤ちんと話し込む名前に体重をかけながら、もぐもぐとソフトキャンディーを食べる。

「ったく、敦はそんなに名前が大事なのかい」
「大事っていうかー、いっつも一緒だしー?」
「幼馴染だもんね」

ふふっと笑う名前はまるで綿菓子みたいだ。こうやって俺だけ見てればいいのに。ふにゃりと笑う名前の目元にそっと唇を落とすと「ひゃ」と短い悲鳴を上げる名前とため息を吐く赤ちん。頬を染めた名前からぽかすか叩かれるも、まったくもって痛くなく、なんだが心地良いリズムを打たれている気分になってくる。


きっつーい練習後、いつものように黒ちんとだらけていると、ステージ際できゃっきゃと楽しげな声が聞こえてくる。視線だけそちらに向けると、黄瀬ちんと峰ちんと楽しそうに喋る名前の姿。あーあー、あんなに笑ってるし。「涼太くん」「大輝くん」ってなんだんだし。名前は俺の名前だけ呼んで、俺にだけ笑ってればいいのに。あー…

「…ムカつく」
「え?」
「ねー、黒ちん。ああいうの見るともやもやしない?」
「ああいうのっって…ああ、名字さん」
「俺ねー、名前は俺にだけ笑ってればいいと思うんだよねー…」

俺のお腹に頭を乗せていた黒ちんをどけて、未だ楽しそうにはしゃぐ名前たちのもとに向かう。げっ、峰ちんってば名前の手ぇ握ってるし。うわ、黄瀬ちん、名前のうなじ触ってんじゃん…信じらんなーい。そんなつもりはないけれど、あちらに向かう足はドンドンと音を起てているらしい。こっちに気づいた黄瀬ちんはあわあわと目を泳がせている。

「名前ー」
「ん?あっくんも、お疲れ様ー」
「ぎゅー」
「ぎゅー?」

ぎゅーとオウム返ししてきた名前を後ろから掬うように抱きしめる。峰ちんから触られた小さな手を撫で、消毒する。あー、あとなんだっけ。…ああ、黄瀬ちんが触ったうなじか。

「ちょ」
「おまっ」
「ひっ」

かぷりと噛み付いて、ぺろっと舐めとる。…やっぱり名前は甘い。「あっくん、何するのー!」と怒る名前に「消毒だよー」と笑えば、困ったように眉を下げる名前。困った顔も笑った顔も、ぜーんぶ俺のためだけに見せればいいのに。名前がいないと苦しくて苦しくて、死にそうになるのに。

彼なりのし方
「これで付き合っていないんだから、困ったものですよ。」

−−−−−
▼蒼井様リクエスト
お菓子にしか執着しない紫原くんが、幼馴染の女の子のことになるとびっくりするくらい大切にして、もやもやするたびにあちこち噛み付いちゃうようなお話。
リクエスト有難う御座いました。
120708
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