これこれこれを読んでから、先に進まれることをおすすめします。


青峰に情けない姿を見せ、なんとも言えないタイミングで告白をされてから、数日。黄瀬は未だにあの子とお付き合いをしているらしい。というのも以前と変わらず、遅刻することなく登校してくるのだ。早く別れろ、別れるな、別れろ、別れるな。悶々と考えるも、どう倒れても私が幸せになる未来が見えてこなくて涙が出てくる。

気分転換に付けたアニックグタールのシェブレフォイユの香りが鼻につく。柑橘系の爽やかな香りはどことなく黄瀬を連想させて、気分転換失敗。ふーっと長めの息を吐くと、ペシッと頭を叩かれる。

「幸せ逃げっぞ」
「…青峰」
「辛気臭ぇ顔してんなっての」
「うん、ごめん」

ぽふぽふと頭を撫でられる感覚は、つい先日振り振られなんて一悶着があった男女には思えないほど優しい。この前から緩んだままの涙腺は、そんな些細なものにも脆く、刺激される。

「うー…、泣くから撫でないで」
「そーかい、そーかい」

廊下から除く黄瀬の顔は…どことなく幸せそうだ。結局、元の鞘に収まったというか、なんというか。はたまたチャンスを逃したというか。「幸せになるって難しいね」と呟くと「そうだな」と返ってくる呟き。あーあ、私もああやって優しい笑顔を向けられたい、な。

「名前っち、うーっす!」
「うーっす…」
「元気ないっスね、どーかしたんスか?」
「別にー…」
「お前ぇは元気ありあまってんな」
「まあ、愛の力ってやつっスよ」

キラキラと輝く笑顔。きっと私にはこんな笑顔を引き出すことは出来なかっただろう。まさしくそれは、愛の力ってやつだ。

「…私も彼氏欲しいなー」
「名前っちなら、すぐにできるっしょ!ねっ!」
「どうだろ…」
「だな」
「えー、俺、名前っちみたいな彼女、いいと思うんスけどね」

キラキラ輝く笑顔が放つ、大きな大きな爆弾。小さく溢した「ありがとう」はきっと黄瀬には届かない。彼より大切な誰かができた時、私が枕を涙で濡らす日が終わりを告げるんだろう。幸せそうな背中に描いた好きは、一生彼には、黄瀬には届かないまま。


そうだね、私は…―――


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10000hits・続編
120708
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