天の川が織りなすラブストーリー。さしずめ私は織姫様。鼻歌交じりに用意したケーキは予想以上の出来栄えだ。デコレーションを施したチョコプレートを乗せて完成。隠し味は私からの愛情です、なんちって。 指についた生クリームをぺろりとなめ、包装へと取り掛かる。手作りなんてばれたくないのだが、如何せんお店のもののようにはいかないため、ある程度の覚悟を決める。さあさあ、時刻は間もなく約束のお時間です。 ディスプレイに表示された番号の羅列に、躊躇なく発信ボタンへと指を滑らせる。ワンコール、ツーコール、スリーコール… 『もしもし』 「やあやあ、彦星様。お誕生日おめでとう」 『胸糞悪い冗談なのだよ。用が無いのなら切る』 「あるある!あるから切らないで」 『…一体なんなのだよ』 「真太郎、今家にいる?」 『いないことはないが』 「わかった、すぐいく」 驚いたような音を出す機械から耳を離しつつ、通話終了ボタンをぽちり。私の家から彼の家までは徒歩30秒。いわゆるお向かいさんで、彼とは幼馴染っていう柵にまみれた関係だ。まあ、幼馴染を柵だと思っているのは私だけなんだろうけど。 玄関を出て数歩ほど歩くと、そこには緑間という表札が目にはいる。いつもならインターホンなど使わず、直接ドアを開けるのだが、今回ばかりはそうもいかない。押しなれないボタンを凹ませると、応対する真太郎の声と、近付く足音が聞こえた。 がちゃり、 「来ちゃった」 「帰ってもいいのだよ」 「これもらってくれたら帰るよ」 「なんなのだよ、これは」 「ケーキなのだよ。お誕生日おめでとう」 「…ありがたく頂いておくのだよ」 「んもう、素直じゃないんだから、真ちゃんは」 「うるさい、名前には言われたくないのだよ」 「はいはい。それ、私からのプレゼントだから」 ケーキを渡すと、先ほど来たばかりの道を帰る。といっても、たかが数十秒の距離であるが。これからの展開を想像しただけで高鳴る胸は隠しようがなく、吸った空気は大きな溜息となって飛び出す。 この道路が天の川で、私が織姫様で。向かいの彼は彦星様。七夕の奇跡を信じた織姫様の一歩は、天の川を大きくするのか。それとも0距離にしてしまうのか。 僕と君の 不可解な関係 について チョコプレートに書いたアイラブユーは貴方に届いたでしょうか。 −−−−− HAPPY BIRTHDAY!! 120707 |