うちの高校はやたらとバスケが強い。という話はよく耳にしていた。私自身、さほどスポーツに詳しいわけではないが、今日初めて見学した彼らの試合で分かった事がある。強いなんて、そんな言葉じゃ語りつくせないんだ、と。

隣の席の赤司くんは東京からバスケのスポーツ特待生としてここ、京都までやってきた。主にこってこての関西訛りが響く教室で、彼の東京訛りは都会を匂わすには十分だった。ただそれだけでも特別に見えるのに。あの日、バスケットボールを追いかける彼を見かけてから、さらに特別が増したように思う。この世に生を受けて十数年経っているのだ。この特別をなんと呼ぶのかなんて知っている。

今日の授業はペアワークなるものがある。つまりは隣と一緒に協力してお勉強いたしましょう、というものだ。それなりに高い学力水準である我が校の学年トップである彼にとっては、一人でこなせるような内容なんだろうな。なーんて考えても仕方ない。様子を窺うように隣の席へと声をかける。


「赤司くん」
「ん、なんだい」
「その、ペアワークらしいんやけど。机くっつけてもええ?」


「構わないよ」と笑み、こちらへ机をずらす赤司くんをまねるように私も机をずらす。距離にしてわずか10センチ少々しか離れていない場所に彼の肩があるのだと思うと、妙な緊張感が走った。バスケ部の中では少々小柄…とはいえど、男性の平均身長と変わらない程度の高さにある彼の頭は、目は、口は。今は私に向けられている。


「えっとな、ここなんやけど…」
「ああ、ここならこれを…、で、こうすると」
「おぉ!なるほど」
「…名字さんってさ、単純って言われないかい?」
「え、どうして?」
「いや、そういう所も可愛らしいと思うよ」


くすくすっと声をひそめて微笑んだ彼に自分が笑われているんだという事実に気付く。教えてもらった答案を見れば、明らかにおかしな部分がある。もしかしてこれは、もしかするのか…。笑った彼の顔にときめいたのと、恥ずかしさとが入り混じり、顔へと血が昇って行くのが感覚的に分かった。


「めっさ恥ずかしい…」
「じゃあ、きちんとした答えを探そうか」


笑いが尾を引いたような顔をする彼を前に、失態を犯した事を反省する私。今はまだ駆け出しの恋とはいえ、少しばかり自己嫌悪さざるを得ない状況に、心で泣いたのは内緒の話。



(あー、可愛いな、ほんと)

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1万打・赤司くん
優しくて不器用な彼は
私の独断と偏見でプチ連載です。
120704
(加筆修正:120706)
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