これの続き


あの日、マグカップ買う予定だった僕らのもとには、お揃いのストラップも共にやってきた。へらりと笑った名前は「和成とお揃いが増えた」と嬉々としていて、可愛いって言葉じゃ語りつくせない程だった。(あ、もう病気でいいです。末期患者でいいです。)

そしてそして、今日は待ちに待った僕らの1年記念日だ。この日のために拵えたリングを鞄に入れ、名前の家へと向かう。素敵なレストランでディナーを慎みながら『はい、これプレゼント』『なにこれ、きゃっ、ゆびわ!』みたいな事もやりたかった。できる事ならば、本当にやれる内にやってみたかったのだが、今回はリングの代金のみで予算がだいぶ減ってしまった。その事に気づいていたのか気付いていないのかは分からないが、名前は「一周年はおうちデートしよ」っと笑って俺を誘ってくれた。まあ、都合良く解釈していいのであれば…気付いていないでほしい。(彼氏が金欠なんて、ちょっと恥ずかしいじゃん)

「さあさあ、たーんとお食べ!」
「めっちゃ美味そう…これ、名前の手作り?」

目の前に並ぶ料理に、思わず舌舐めずり。名前の手作りかと問うと「この世には和えるだけという素敵な調理グッズがあってだな」と言っていたので、いろいろと察する。いや、それでも彼女が自分のために作ってくれたのだ。その調味料だけで全て世界一おいしいものへと早変わりする。

あーん、なんて甘い展開は待っていなかったのだが、名前の料理はおいしかった。彼女曰く、一部は出汁から自作らしいので、ほんと良い俺の嫁になると思う。あ、気が早かった?といっても、そんなことは無くなるのだ。

「さーってと、名前さん」
「なんでしょう、和成さん」
「結婚しませんか」
「……、は?あ、いや…、は?」

ムードもへったくれもないこの瞬間、一世一代のプロポーズに踏み切る男なんてきっと俺ぐらいだろう。ただ、これは俺の憧れでもあったのだ。キザな台詞なんて笑って言えない性分だから、さりげない、何気ない。そんなタイミングで言えたらいいな、なんていう。

 …あー、でもこれは唐突すぎたろうか。

目の前の名前は目を白黒させ、顔を真っ赤に染めている。その反応は期待せざるを得ないけど、どんな言葉が降りかかってくるのかは、ちょっと予測不可能だ。

「えーっと、名前さん?」
「あ、ごめんごめん。どんな言葉で和成を懲らしめようか考えてた」
「え、そんなに嫌だった?」
「違うよ!違う、嬉しかったの!」

にっこりとほほを染めて笑った彼女にほっと胸をなでおろす。「嬉しいのに罵倒するなんて、尖がった愛情表現だな。」そう言って笑うと「唐突なプロポーズしちゃう人に言われたくない」との事。それは言えてるか。そっとこの日のために用意した指輪を出し、改めて口にする。が、しかし、また反応はなし。目の前の彼女を見やると、すっと左手を差し出してきた。

「一生幸せにしてもらってやるから、さっさと指輪つけやがれ…ください」
「…なんだよそれ。りょーかいです」

薬指に銀色のそれが通った瞬間、俺の首に腕を回す彼女。肩がしっとりとした感覚に陥った時、改めて幸せをかみしめる。


(泣いてんじゃねぇよ、ばーか)(そっちこそ)

−−−−−
一万打記念・高尾くん続編です。
ご要望、ありがとうございました。
120703
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -