今宵も星がきらきら。はろーはろー、貴方も同じ空を見上げていますか?そちらは今晴れてますか?





「それでね、りかってば顔真っ赤にしちゃって」
『…ん、へぇー』
「んっと…、あーっと、そろそろ辰也、眠い?」
『そんなことはないけど、なんで?』
「ううん、ちょっと声が眠そうに感じたから。」

機械越しに聞こえる声は少しばかり色褪せる午前1時。シーンという効果音がぴったりの部屋のベッドで寝ころび、文明の利器を耳に当てるこの時間が一日の終わり。不意に漏れたであろう欠伸の音でさえ拾ってしまう所は憎たらしいが、簡単には会えない距離を埋めてくれる所はほめてつかわそう、と思う。とはいえ草木も眠る丑三つ時なんてもうすぐである。互いに学生である身なので、決して朝は遅くはない。むしろ、部活動に加入している辰也は早い方だ。頻繁に連絡を取っていない、かと言って遅くまで付き合わせるのは申し訳ないのも事実。

そんな事を考え口ごもる私を察したのか、辰也がふんわり笑ったような気がする。耳を掠めた5文字に、見えないとわかっているのに大きく頷く。

「私も、早く会いたい」
『アメリカと日本、って頃と比べるとすごく近くになったからね』
「それでも簡単には会えないよ」
『電話だって前よりしやすくなっただろ?』
「それはそうだけど」

窓の外を眺める。きらきら、きらきら。瞬く星と、やわらかい光を零す月。ちょっと前までは同じ時間に同じ月を眺めることができなかったのだ。それを考えれば、秋田との遠距離なんて可愛らしいものなのに。どこかじゃ判っているのに、どこかじゃ泣きたくなるほど辛い。あーあ、あと何回寂しい夜を迎えるんだろう。夜が来れば辰也と話せるけど、逢えない日々は積み重なっていくだけなのに。

鼻の奥がツンと響く。いかん、口を開くといらないものがこぼれそうだ。『あ、流れ星』小さな小さな辰也の呟き。『名前、見れた?』「え、気付かなかった」悟られないように会話を続ける。流れ星でも、神様でも仏様でも構わないから、私の願いは叶うだろうか。

「お願い事した?」
『うん、ちゃんとね』
「私もしたかったなぁ」
『大丈夫、名前のお願いはすぐに叶うから』

くすくすと笑う辰也に「なんで」と悪態をつく。すると私の考えそうなことは手に取るようにわかるときた。ムッとするような、嬉しいような。互いの事がわかるなんて素敵なのか、私がわかりやすいだけなのか。

ふと時計を見ると、辰也が眠そうに欠伸をしてから結構な時間が経っていた。これ以上話すのは辰也はもちろん、私にもよろしくない影響を与える。そろそろ寝ようか。その言葉は私が口にするより先に耳元から聞こえた。

「…私も同じこと考えてた」
『似たもの夫婦ってやつかな』
「ふ!…うふじゃないよ」
『まだ、ね』
「からかってる?」
『全然』
「ん、まぁいいや。じゃあそろそろ切るね」
『うん、おやすみ。また明日』
「また、明日ね。おやすみ」

ツーツーツーツー…

あゝ、今日が終わった。また明日と繋ぐ言葉が何より素敵なオマジナイに聞こえる。ねぇ辰也、知ってた?オマジナイって漢字で書くと「御呪い」なんだよ。私たち、互いを呪い合って繋いでるのかな。

『The course of true love never did run smooth.』

前に辰也と電話していて、私が会いたい逢いたいと駄々をこねたときに言われた言葉だ。あまりにもネイティブで聞き取れなくて、仕舞にはメールで送れと言ってしまった。字面でも素敵な言葉だとわかるのに、意訳を知ったとき「私は素敵な恋をしてるんだな」と気付かされた。かといって、辰也に会いたい気持ちが薄まる訳ではないのだが。

また明日が来れば、辰也の声を聞けるのだ。しばらくすると、本物に会えるのだ。茨の道とは言えど、ゆっくりと走れば貴方に届くのだから。

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1000hits・氷室くんです
室ちんのネイティブな英語が聞きたい
英文はシェイクスピアの名言で
真の恋の道は、茨の道であるって英文です。

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HoshiDenwa/a n d r o p
120629
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