もしも、の世界を考える。例えば今こうして隣にいる名前が死んでしまった世界。そんな世界なんてあってほしくはないと言っても、いつ何時何が起こるかなんてわからない。「テツくん」と自分を呼ぶ声も、微笑む顔も、温かな体温も、次の瞬間にはなくなってしまうかもしれない。

今日はおうちデートいうことで、部屋で2人映画をみる。手に汗を握る展開になる度に、ぎゅっと腕に抱きつく彼女が愛おしくて愛おしくてたまらない。例えば彼女が死んでしまったら、この映画は自分ひとりで観ることになるのだろうか。2人で観た記憶を持ったまま、君のぬくもりを腕に残したまま。  ――…下手なことを考えるとストーリーが頭に入ってこない。観たいと言っていた映画を覚えていた名前がせっかく借りてきたのに、彼女の好意を無駄にするなんて。


物語がエンディングに近づいたころ、肩に少しの違和感。重みを感じる方へ視線をずらすと、規則正しいリズムで上下する名前の体。結局寝てしまったのか。彼女の寝顔を覗き込んで、物語序盤で考えていたことを思い出す。あゝ、このまま彼女が目を覚まさなかったらどうしようか。楽しい事も哀しい事も2人だから素敵なものに感じたのに。

白雪姫は王子のキスで目を覚ましたという。僕が彼女に相応しい人ならば、目覚めてくれるのだろうか。淡い期待を抱いて桃色のそれに口づける。何度同じことを繰り返しても感じる甘味には虜になってしまう。そんな事を考える側ら、どうにかして目覚めさせたいなんて考えがぽつり。自然と深くなる口付けに「んっ」と声が漏れる音がした。

「…ん、テツくん?」
「おはよう、名前」
「あれ、寝ちゃってた…って近っ、え、?!」
「さながら白雪姫ごっこってところです」
「ね、寝込みを襲うのは関心しかねます…」


少しだけ濡れた唇を尖らせ、赤く染まった頬を膨らます名前。できることならずっと隣にいたい。できることなら名前を起こす役割はずっと自分でありたい。映画の影響なのだろうか、巡らせていた考えのせいだろうか。彼女の手をとり、ぐっと力を込める。あゝ、僕だけのスノーホワイト。深い眠りにはつかないでおくれ。

ふたりだけが幸せなハッピーエンド
ふたりだけが幸せなハッピーエンド


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1000hits・黒子っち
文学少年故の童話ネタと言いますか
もう、黒子っちわかりません…

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眠り姫/S E K A I N O O W A R I
120627
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