、ふわり、ふわり
いつもなら定まらない視線があなたの姿を見つけたときだけ、集中する。あ、コメント噛んでる。可愛いな、うん、可愛い。照れる顔も、可愛いな。あ、ちゃんと笑ってるや。


「黄瀬くんカッコいいね!」


当たり前じゃないの。ふと聞こえた女の子の声に毒づく。どんだけ涼太くんがこの日のために、コメント考えたりがんばったと思ってんのよ。私達みたいなペーペーにはわからないくらいの努力が隠されてんのよ。

別に彼にとって、私は特別じゃなくて。ただの平凡なファンだけどさ、ちょっとだけ自惚れる。彼にとって、どんなファンが理想かわからなくて、わからなくて、わかんなくって。とにかくイベントにも試合にも行けるだけ行って。少しでも彼にとっての良いファンになれるように頑張った。結果、彼は私の顔を覚えたらしい。こうしてイベントを観に来た時、目があったら視線で「また来てくれたんだ!」って反応があるから。ほんのちょっと、自惚れた自慢。


「あ、また黄瀬くん名前のことみたねー」
「………気のせいだよ」
「そっ。まぁ、あんたみたいにイベントも試合も行ってりゃーね」


なによ、と反抗すれば「嫌でも覚えるわな」とちょっと厭味っぽくいわれる。わかってますよ、いくらも彼につぎ込んでいるからね。誰にも気づかれないようにため息を吐いて、またステージに集中した。


ラストトーク、これで今日のイベントすべてが終わる。今日は一番前の席だからな、なんてと考えると少し胸が弾む(ファン心故、ファン心故よ)あ、こっち来てるかな?今日も気づくかな?相変わらず可愛いな。あ、いや、かっこいいです。そんなことを考えてると目の前には彼。目があったかと思うと私の大好きな、くしゃっとした笑顔で「いつもありがとう」だって。ああ、これってやばいよ、馬鹿。


に落ちるがした

握り締めた手のひらに、ぽつりと落ちたのは私の涙だと気づくまでもう少しかかりそうだよ

水玉模様の模様
(どうしよう、叶わないのに、敵わない)
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