【黄瀬涼太】検索結果 …,…,…件

ぼーっとパソコンを眺め、スクロール、スクロール。類似の検索に並ぶは【黄瀬涼太 バスケ】【黄瀬涼太 モデル】【黄瀬涼太 出身校】、そして【黄瀬涼太 彼女】。その文字をそっとひと撫でして、携帯へと手を伸ばす。カチカチとボタンを押し進め、表示された名前に躊躇することなく通話ボタンをポチリ。


「もしもし、赤司くん?」
『名前じゃないか。久しぶりだね』
「うん、元気?」
『それなりにうまくやっているよ』


かつての絶対的主の声は不思議と胸に落ち着きをくれる。逆らえないからとか、恐怖心とか、そんなんじゃなくて。きっと心のどこかでは彼のことを信頼し、尊敬していたのだ。だから今もこうして彼を頼り、縋っている。


『で、今回はどうしたんだい?』
「うーん…、うん」


えへっと苦笑いを浮かべると、機械越しに聞こえる短い溜息。時計はもうすぐ午前0時を指そうとしている。彼の生活リズムを狂わせようとしているのだろうか。なんとなくそんな気がして、恐る恐る口を開く。


「最近涼太くんと会ってないの」
『へぇ、珍しい事もあるもんだ』
「私が忙しいっていうか、涼太くんが忙しいっていうか」
『確かに涼太をテレビで見ない日はないな』
「そうなの。で、連絡も取りにくいし、さ…なんだろ、うん」
『…名前はまた涼太の事を検索して、自己嫌悪ってところかな』
「ご名答です」


馬鹿が、もうやめろって言っただろうが。叱咤する赤司くんの声をBGMに、先ほどなぞった文字にカーソルを合わせる。カチッという音ともに表示された文字の羅列が私の体の至る所に刺さって、痛い。


『涼太が名前だけだと言ったんだろう』
「うん」
『なら、名前が涼太を信じなくてどうするんだ』
「そうなんだけどね」
『ネットなんてものよりも涼太のほうがよっぽど信頼できる』


目を閉じると、すっと胸にしみる赤司くんの言葉。「わかった、もう見ないよ」そう告げると「それがいい。今日はもう寝ろ」と言われ、通話終了。ツーツー、と独特の音が聴覚を支配したころに目をあけると、未だ画面にはそれが映っている。


「閉じるの忘れちゃってたか」


早速だけど、約束破りますね、キャプテン。

そっと胸の中で謝り、画面の内1つのリンク先をクリック。彼に関するスキャンダルは何度も目にしてきたが、今回ばかりは信憑性が高すぎてどうしようもない。だって、このデートを撮られた日は私とデートだったじゃない。でも直前に「仕事が入った」なんてドタキャンの連絡があって、それで ―――…。

ぽろりと出てきたものを皮切りに、堰を切らしたように流れる涙。好きだからこそ辛い、好きだからこそ嘘を吐かれたくない。好きだから、好きだから、好きだから。


ベイビー・ベイビー・アイラブユーがわかるかい?


『名前』と彼が私の名前を呼んだのはいつが最後だろう。彼の愛を聴いたのはいつが最後だろう。考えれば考えるほど胸は軋み、悲鳴を上げた。


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幸せなお話の予定が、いつの間にか
機会があれば続きを書きたい、な
120624
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