うちの彼女は高校時代の相棒と似てるのか、よく占いやら願掛けやらを信じるタイプらしい。この前も観葉樹を購入し「おうちのここに置くと運気が上がるんだって!」と嬉々として水やりをしていた。あまり水をやりすぎると寝ぐされを起こすぞと言ったのは記憶に新しかったが、予想通りというか、彼女は枯れた鉢植えの前にひざを抱えていた。


「私だけ、うまくいかない」
「んなことないって」
「緑間くんはこれでシュートの成功率が上がったっていってたし」
「真ちゃんは元からっしょ」


でも、だって、けど。ぶつぶつと不貞腐れている名前は本当に素直である。占いも信じやすい。とはいえ、信じるのはいつも悪い結果ばかり。高校時代はそれを見かねた真ちゃんが思わずラッキーアイテムを名前に与えていたりした。


「これで運気上がったら、さ」
「うん?」
「和成くんとも、もっとうまく、さ」


名前の言い分はこうだ。

数週間前に俺と喧嘩したことでギスギスとしていたのが、言葉であらわせない程嫌だったらしい。当の俺はもう忘れているほどの些細な喧嘩だと思っていたが、彼女の胸にはトラウマのように残っていたようで。それで、真ちゃんに何か運気が上がる方法はないかと相談。この時点でちょっとおかしいのだが、彼女なりの頑張りだ。目を瞑っておこう。まあ、それで風水を教えてもらい、観葉樹に願掛けするように水やりを行っていたら、このざまだと。


「もう和成くんと喧嘩したりするの、やなんだもん」


可愛い奴と思うのが早かったのか、来たばかりの彼女の部屋を彼女の手を取って出掛けるのが早かったのか。和成くん?!と焦る名前の声がする。繋いだ手にギュッと力を込めると、握り返した弱い力。


「どこ行くの?」
「んー、花屋さん?」
「なんでまた」
「また観葉樹買おっか」


単純なのはお互いさまで。例えば名前からのメールにハートマークがあるだけで、心臓が跳び上がる。例えば、そう、さっき。不貞腐れた名前の言った言葉だけで、簡単に幸せになれる。きっとこの言葉は覚えていたいんだけど、幸せが重なりすぎて、上書きされて、なかなか思い出せない幸せになっていくのかもしれない。それでもいいのだ。

これからも傍にいれますように。ずっと名前と笑い合えますように。名前を守れますように。どんな神様でも、誰だってもいい。そんな願掛けも許されるのなら。

口角をあげ、目を細める名前の手を離れないように握るのがこれからも俺であれば、これ以上の幸せなんてないんだろうな。




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1000hits、高尾くんです。
高尾くんに悲しいお話は似合わない気がして

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スターフルーツ/メ レ ン ゲ
120624
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テーマ「人外ファンタジー」
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