思い出すのは幸せだった日々。思い返すのはあの日の後悔で。部屋の至る所に残る『彼女』を追いかけては、途方に暮れる。
「由孝、もう別れよう」
「嫌いになんかなってない」
「好きだけど、ダメみたい」
最後の最後まで狡い彼女は、いつまでも僕の心に影を落として離れない。ずっと一緒にいようと誓った約束は破られ、幸せだと思った日々は今はただ、ただ、悲しい。
名前と座ったソファに今は一人、膝を抱えて願うのは
「彼女が誰かと幸せに笑っていますよう」
「彼女が今でも僕を思って泣いていますように」
できることなら前者は壊してしまいたい幸せだ、なんて自嘲。壊されるべきは自分が都合のいいように解釈してしまう、この独り善がりな僕の心だろう。
「おわりのはじまりってやつだよ」
「なにが?」
「始まりってやつは、いつかは終わるの。つまり、終わりが来るってことは始まるってこと」
「なんだよそれ」
あの時は唐突だった名前の言葉が、今になってよくわかる。きっとあの言葉はこれを予言してたんだろう。
別れようって言われた時も後を追いかけなかったのは自分なのに。名前に未練がましく思われてたいなんて、都合がいいにも程があるのに。きっと彼女を幸せにできるのは俺しかいないんだー、なんて放漫な考えがあったんだろう。
無垢の終結
名前との始まりがあるなら、必然的に名前との終わりもあるに決まってるじゃないか。あゝ、あまりにも彼女の隣が幸せすぎて、そんな簡単なことすら忘れてしまうなんて。
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1000hits第5弾です。
森山先輩夢で本人をなかなか喋らせないことに定評のある私ですが
今回もセリフが回想時のみ。ごめんね、好きです、先輩。
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コワシテ
/G O O D O N T H E R E E L
120622