何をするにも不器用だけど、ただひたすらあの子を守り、愛しつづける黄瀬が大好き。その視線が私に向く事はないと知っていたはずなのに、決して報われはしないと分かっていたはずなのに。今夜も流れる涙はあなたのために流したものです。


「おはよ」

どきっとするくらい眩しい笑顔で挨拶してくる黄瀬に少しだけ頬が緩む(そして少しだけ胸がちくり、痛む)

「今日は早いんだ」

そんな事、悟られたくないからちょっとだけ、憎まれ口を叩く(何気にこいつ、勘鋭いし。) ちょっとねー、なんてにこにこしながら言ってくるから、すぐに彼女関連だとわかった。(あー、胸が痛い)

「アノ子ト何カアリマシタカー?」
「…聞く気あるんスか?」
「・・・あるから聞いてんじゃん。で?」

『聞く気なんて、さらっさらないよ』
思わず出掛かった言葉。ホントは聞きたくないし、聞く気もなかった。だけど、あんたが、黄瀬が、あんまりにも聞いて欲しそうにしてるから・・・(あー、これって惚れた弱みじゃんねー・・・)

「あいつが『涼ちゃん、いっつも遅刻気味だから私がモーニングコールしてあげる』って言ってきて、それから目覚めはバッチグー!ってなわけッスよ。」
「ふ〜ん・・・」
「あ、名前ひでー・・・。」

くすくすっと笑い、私の背中をばしばし叩き、『お前も早く彼氏作れよ−』なんて、無責任な事を言いやがる黄瀬。好きな人が彼女持ちなんですー、と言えば『んじゃ、奪っちゃえ!!』なんて軽々しく言いやがるし。

「無理だもん・・・」
「は?名前ならいけるッスよ!!」
「無理なんだってば。その人さ、今、すっごい幸せそうだから・・・。その笑顔を見るだけでいいんだよ、私は。」
「そっか・・・。」

そう。だからお願い、黄瀬。悲しそうな顔をしないで。もっと笑って見せて。今夜こそ、私が涙で枕を濡らさないように・・・・・・


流れたに叶わぬ願い を
−あと、どれだけこんな日が続くのだろう−
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