※未来捏造(むっくんがNBAに行きます!)


このまま夜が明けなければいいのに。このまま朝が来なければいいのに。

静寂が周りを包む、午前2時。名前と繋いだ左手だけが暖かく感じる。高校生活を過ごした秋田よりましだとはいえ、東京の冬は寒い。街灯だけを頼りに、名前に俺を残すための道を歩く。

「敦くん、まだかかるの?」
「んー…、もうちょっと」

少しだけ、ほんの少しだけ聞こえた息遣いに安堵感を覚える。この手を離したら二度と会えないよ、なんて誰かが囁いた気がした。

離すもんか、絶対に離すもんか。

せめて時が僕らを分かつまでは、彼女のそばに居ると決めたんだ。


「着いた」

一言、声をかける。先程まで俯きながら歩き、辛そうに息をついた彼女がそっと顔をあげる。

− すごい…

感嘆の声をあげて、ふわりと微笑む横顔に胸が軋んだ。頬には涙の痕が見える。泣かせたのは他の誰でもない、俺だ。

「虹、みたい」
「虹?」
「うん、夜の虹」

アメリカと日本の時差を踏まえると、同じ頃に虹が見れるかもしれないね。

名前が笑った。途端に滲む俺の視界。と、歪む名前の笑顔。あれっ?あれれ?敦くん泣いてる?って、バカじゃないの。名前だって泣いてるじゃん。その言葉は胸の中だけで収まらず、口から溢れ出していたらしい。胸のあたりにポスッと音をたてて、泣き崩れた名前が収まる。

「神様は馬鹿野郎だね」
「んー、いるならね」
「敦くんと離れなきゃ行けないって分かってるのに。別れなきゃいけないのに」
「…ごめんね、名前」

やだよ、敦くんと離れたくないよ。喚く彼女を宥める様に肩を抱く。ぽたぽたと零れる涙は服に、地面に、染み入る筈なのに何故だか胸で波紋を描いた気がした。

名前が俺の名前を呼ぶだけで、名前の名前を呼ぶだけで、こんなにも愛しさが溢れ出して止まらないのに。こんなにも小さい名前を守るのは自分だと決めたのに。現実ってのは本当に残酷だ。

「さよなら、なんて台詞は言えないよ…」

上空を仰ぎ、絞り出した声は名前に聞こえてしまっただろうか。朝方にはあの辺りにいるのだろうか。
昨日じゃ早すぎて、明日じゃ遅すぎて。今しか無いのはわかってるのに、わかってる筈なのに。名前から零れる涙を掬う事しか出来ないなんて。




サヨナラもまたねも、全て彼女が奪ってしまった午前5時。零れ落ちたのは俺のものか、彼女のものか。
白い雪は触れたと思ったら消えてしまった。まるで、僕らのように。

−−−−−
1000hits第4弾です。
私が1番と言ってもおかしくない位に好きな歌です。
黄瀬くんかな、氷室くんかな、と考えつつだったのですが
今週号のジャンプで彼かなって。

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Noah/a n d r o p
120621
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