きらきら輝くキミに、恋をした。
そんな些細なことに気がついて、早2ヶ月。時間の流れの速さに驚く暇を与えないほど、今は通り過ぎていく。目の前の笠松くんは相変らず、先生と睨めっこ(可愛いな、なんてね)カーテンと彼の髪の毛をさらう秋の訪れを告げる風に嫉妬しつつ、彼を見習って、私も先生の話に集中しようと思った。少しは彼に近づけるように。(宙を舞う想いはキミに届くはずも無いのに、ね。)(思考いつだって笠松君中心で、あの日から止まってるのに)
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『名前、悲しいお知らせ』
神妙な面持ちで親友が口にした言葉は、私を地獄へ落とすにはとても容易いものだった。
『笠松君、彼女いるんだって。私もね、名前に言われて調べるまでは知らなかったんだけど…。部活の後輩…、あ、マネージャーね。その子と付き合っててさ、傍から見ればただのバカップルなくらいみたいでね』
言葉は右から左へ抜けてはくれず、一度私の脳へと伝達されてしまった。大事な親友は私を傷つけたいわけじゃなかったのに、あの日は彼女に八つ当たりしたことを思い出す。それを全部分かっててなのか、いっさい怒鳴らなかった親友はさすがというか、なんというか。
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それからも笠松君と後輩マネージャーは別れなくて、すっごく切ない毎日を送っています。私はバスケのルールなんて、これぽっちもわからないし、後輩みたいな可愛らしさもない。きっと、その後輩マネージャーに勝る特権というのは、同じ教室で勉強ができ、彼女の知らない一面を知っているということぐらいだ。(彼女だって、私よりいい特権があるんだろうけどさ)
ふぅ、とため息を吐くのと、風の勢いに乗って私の消しゴムが前の席へと転がっていくのは、ほぼ同時だった。
あ、と思ったときはすでに手遅れで、私の消しゴムは笠松君の足元へ。どうあがいても、私の席からは取れない彼の足元へ。最悪なことに周りは誰も気づいていない。(だれか!)1人焦っていると、目の前に差し出された、手。はっとして目を凝らすと、そこには笠松君のちょっとだけ困ったような顔。
「こ、これ、名字のだろ?」
「あ…、うん。ありがとう」
「おう。・・・と、そこの答え。間違ってる。たぶん次は名字が当たると思うから」
答えは-9。
ぎこちなく微笑んで、彼はまた前を見据えた。残ったのは私の間違った答えと、拾ってくれた消しゴムと、高鳴る胸の鼓動。
『名字は、いつも笑顔で可愛いと思う』
何気ない会話の中で、鮮明に聞こえた彼の声と言葉。今だって、そう。いとも簡単に彼は、笠松君は私の心を奪い去る。(不毛な恋だとわかっているのに)
早く別れてくれないのかな、なんて考えている私は、最高に卑怯な女なのかもしれない。
ごめん、あきらめないよ
(たとえ神に嫌われようとも)