女の子は恋をすると綺麗になるのではなく、恋をしてから綺麗になる努力を始めるのだと最近自覚した。

薄ピンクの唇を開いて「綺麗になったね」と友達が笑った。短かった髪の毛が肩に付き出した。恋をすると綺麗になるね、と誰かが言った。以前は絡み取ることも出来なかった髪先を人差し指で弄ぶ。伸びてしまった髪の毛のせいで、お風呂を上がってからの時間ものびてしまった。あんなにも早く乾いていた髪の毛が、今は十数分と時間をかけねば乾かない。世の中の女子はこんな苦労をしていたのかとしみじみ感じた。「おー名字、髪伸びたんだな」彼の声が聞こえたと思った時には、肩に衝撃が走っていた。斜め上からは彼のからからとした笑い声が聞こえる。少し前ならば牙を向いて彼の言葉に反応していたが、今は小さく深呼吸して彼の言葉に反応する。心臓は駆け足のリズムを刻んでいた。「お、女の子らしく、しようと思って…」目の前の高尾は目を丸くして表情を固めた。効果音にするならば、キョトン…というのがとてもしっくりきて、少しだけ笑える。刹那、その顔は苦虫を噛んだようなものに変わった。一文字に結ばれた唇が歪に開いて「好きな奴でも出来た?」と音を奏でた。鼓膜に振動が伝わる。彼の言いたいことを何となくで噛み砕いて理解し「…その人のために可愛くなりたくて」と言葉を返した。その直後はこれといって、彼からの反応はない。いつもまぶしすぎるほどの笑みを浮かべている顔は何とも言い難いといった表情をしていた。言い淀むような仕草を見せた後に、彼は「お前に可愛くなってもらえる男が羨ましいな」と呟いて、緑色の彼の元へと掛けていった。その一言がどういう意味を孕んでいるのかなんて、彼にしかわからない。けれども心臓が全速力で走っている。残念ながら思考回路は都合のいい方向へと事を運ぼうとしていて、無意識に頬は赤く染まっていく気がした。

女の子は恋をしてから綺麗になる努力を始める。誰よりも振り向いて欲しい彼の為に、コツコツと、小さな努力を積み重ねるのだ。
あざとくにいきるのです

蒼井様リクエスト/121111
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -