※同性愛表現(宮→高←緑)、下品な表現がございます。


ボールは、弾む。ゴールは、揺れる。じゃあ、弾んだり揺れたりするものは、なあんだ?

「キヨちゃん」
「なんだよ」
「恋するってなんだろうね」
「さあな」

そういったキヨちゃんの瞳は、ずっと高尾くんを追いかける。笑う高尾くんも、顰める高尾くんも、真剣な眼差しでボールを追いかける高尾くんも。どんな一瞬でも見逃さないようにと、キョロキョロ、キョロリ。

「キヨちゃん」
「だぁから、なんだよ」
「恋してる?」
「人並みに」

その視線は熱を孕む。恋情にも似た色を孕む。気づいてないのは彼らだけ…、じゃない方がすこぶる助かるけれど、現実は甘くない。刺さるような視線は高尾くんに絶対的な信頼を置く、うちのエースから送られる。痛い痛い、今なら視線で人を殺めれるよ、貴方。

「人並みって、どれくらい?」
「…人並みは人並みだろ」
「じゃあ愛を注いだ経験は、」
「は?」
「最愛の人とは、もうキスした?セックスもした?その『愛』は気持ちいい?」

私の視線も熱を孕む。純粋な興味?いいえ、汚れた恋慕です。報われない恋をする哀れな男を好いてしまった女の末路、とでもいいましょうか。この恋に純白は似合わないね。

「さあな…、どうだろ」
「すっごく興味があるの。ねえ、キヨちゃん」
「嫌だ、うるせぇ、黙れ、殴るぞ」
「…まだ何も言ってない」

お話してるのは私だよ。どうして見返りのない愛ばかり求めるの。私にお頂戴。1くれたら、100返してあげるのに。ほら、また相棒君が貴方を射るように見つめてる。決して尊敬の眼差しではない、牽制の眼差しで。だから、

「全部私で手を打ったらいいのに」
「…んなもん簡単にできっかよ」
「濁った水は苦しいよ」
「名前の水は棲みやすいのかよ」
「高尾くんよりは」
「うぜぇ…」

拒否するような言葉の割に、そっと手を握る。ぐっ、ぐっ、ぐっ。3回握り締めるのは、今夜はキヨちゃんの家でって合図。どう足掻いてもキヨちゃんの最愛になれない私でも、キヨちゃんの偽りの愛は受け止めれる。それがオンナというイキモノ。

視界の端でドリンクを取りにきた高尾くんが笑う。キヨちゃんの最愛を持っている彼が憎たらしいな、ああ憎たらしい。

棘の劣情
ボールは、弾む。ゴールは、揺れる。弾んで揺れるのは、誰かの心。


(120930)
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