午後の授業が始まって数分。視界がぐにゃりと歪んだ感覚がした。そういえば今朝からあまり体調が良くなかった、気がする。とても居心地がいいとは言えない空間で、そっと手を挙げ保健室に退散退散。ぐにゃぐにゃと歪む廊下を、どうにかこうにか歩いて保健室に辿り着く。保険医不在の、独特な香りが立ち込める其処の白い海に身を沈める。何だかんだで体は限界だったらしい。あっという間に瞼は閉じて、意識も途切れていく。ああ、暫くの間さようなら現実。


「ふがっ!?」

何かに鼻が摘まれたような感覚よって睡眠から起こされてしまった。決して可愛いとは言えない声を上げて起きてしまったことを悔いてもしょうが無い。ちらりと視界に入ったメンズの腕時計は午後7時を指している。予想以上に寝入ってしまっていた。ちなみに起こしにかかった相手は何となく察しがついている。

「翔一…」
「よう、おはようさん」

人当たりのいい笑顔を浮かべて、私の頭を撫でる。そういえばコイツは私の彼氏だったか、悔しいけど。柔らかく撫でる手を振り払って、もう一度布団を被る。背を向けた彼がどんな顔をしてるのかはわからないけども、きっと呆れた顔をしているだろう。

「もうちょっと優しく起こしてよ」
「ほう」
「私、ビョーニンなんだけどー」

ふくれたような声を上げて、更に深く布団に潜り込む。あ、本当に呆れられてしまったらしい。小さな溜息と笑い声が聞こえる。やだな、やさしくない男はモテないのよ…なんて言ってもしょうがないけど。

「ほな、キスでもして起こしたがよかったんか?」
「うん…そうね、そっちが好きよ」
「めんどっちいオンナやな」
「ふふ、そんなオンナが好きなくせに…ほら、やりなおし」

彼がキスをしやすいように、そっと寝返りをうち仰向けになる。目を伏せたまま急かせば、ぐっと近づいてくる彼の香り。そうだな、このままキスだけじゃなくって食べられてしまってもいいかもな。でも此処は神聖な学校だったか。くすくすと笑いながらキスをしてくれる翔一がどういう反応をするのか、それ次第か。
に棲む

緇葵様リクエスト/120917
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