担当教科が違ったとしても、学年ごとに区分けされる職員室は別教科の先生とお隣になることが多い。学生時代から数学を苦手としてきた名前にとって、数学科の教師は敵も同然。できる限り隣に座ることを避けていたのだが、今回ばかりはそうもいかなかった。人当たりのよい笑顔を浮かべて手をひらひらと振る数学教師、もとい高尾に思い切り頭を抱えたくなったのは約2ヶ月前のことだ。彼は彼で、名前に興味を持っているらしい。日々彼女に話しかけては玉砕している。そんな騒がしいデスクの一角について、同じ学年担当の音楽科教師は「彼奴のへこたれなさは学生時代からピカイチなのだよ、ムカツクくらい」と文句を垂れている。そして今日も今日とて高尾のアタックは続く。普段通りでは無駄だと漸く気付いたのか否か、生徒のノートチェックを行う名前のデスクに小さな用紙を置く。不審に思った名前が高尾を見上げながら「何のつもりですか」と一言。その言葉は勿論トゲだらけだ。「名前せんせに問題解いてほしくって」「嫌です。だいたい何度も言ってるじゃないですか。私、数学はわからないって」「数学じゃねえから、ね?」思わず睨みつけたくなる気持ちを抑えこみ、置かれた問題用紙を覗きこんだ名前の顔がポッと赤に染まる。「な、なななな?!」「あれ、どうしたのセンセ」「冗談はやめてください!」「冗談じゃねーってば」ニッコリと笑う彼が教師だと誰が思うんだろうか。「俺、英語苦手なんだけど…どう?」「え?!」「まあ、そんな顔されちゃうってことは文法も完璧ってとこ?」「〜〜〜〜っ!!」未だに赤い彼女の顔を見た、前述の音楽科教師が「お前ら、そういう事は他所でやれと言っているだろうが!」と怒号を飛ばすまで残り1分。
I love you more than words can say.

言葉に出来ないくらい君が好き
(120822)
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