じりじりと焼けるような日差しを降り下ろす太陽を睨み上げても、残暑は和らぐことはない。毛穴という毛穴から吹き出す汗に塗り立ての日焼け止めも溶け落ちている気がした。こんな日が高い時間に何故炎天下の中に放り出されているのか。それは遠くから聞こえてきた応援団の声で全て解決する。

「体育祭の練習なんて、だっるー…」
「そう言わなくとも、最後なんだし、ね?」

友人の励ます声にも生返事しか返せない。そもそも体育祭に練習なんて必要なんだろうか。先程から声を響かせている応援団には必要かもしれないが、私は借り物競走と綱引きと…あとはフォークダンスに出る程度だ。フォークダンスの練習だって体育館でも随分やりこんだというのに。ぶうたれながら首筋を伝う汗を拭っていると、背中にバチンっと衝撃が走る。

「った!!」
「おーおー、最近の女子高生は派手なブラしてんのなあ…紫ねえ」
「あ、おみね!」
「先生な、せーんせ」
「うっさいな、アンタにつける先生なんて存在しないっつーの」
「あ?ったく、可愛げねーな」

浅黒い肌に薄っすらと汗を浮かべた目の前の相手を思い切り威嚇する。この野郎、思い切りブラを弾きやがった。先ほどの坑道といい、普段の行いといい、教育者として如何なものかと思わせる言動ばかりである彼だが生徒からの信頼は暑い。もちろん女子生徒からの人気もだ。うちの学校は異様にイケメンと謳われるような教師が多いのだが、彼の場合はその教師らしからぬ言動も年頃の女生徒達は胸うたれたのだろう。

「可愛げもなにも、アンタの行動のほうが私は信じられない…です」
「別に外してねえし、それだけでもありがたいと思えよ」
「今時、高校生でもやらないっつーの」
「なんかいったか?」
「いえ、別に」

仮にも聖職者の言動とは思えない。と言っても、彼の場合は保健体育の先生をやっているのだ。セクハラまがいな発言は日常茶飯事。それがまた生徒にもウケるし、授業内容をさほど逸脱していないため問題にもならない。頭を抱えているのは私と…、あとは国語科の黒子先生ぐらいだ。いつか黒子先生とはじっくりお話したいと思う。もちろん目の前の彼のことで。

「にしても、名字はまったく成長の兆しが見えねえな」
「…は?」
「先生がいっちょオテツダイしてやろうか?」
「何言ってん…ですか?」
「今んとこBってとこか…まあ先生のゴッドハンドにかかりゃ」
「か、帰れ!!!」

振り上げた右足はダイレクトに彼の股間に向かう。無防備な彼のそこはこれまたダイレクトな衝撃を受ける。ひとまず黙らせた。そう確信した私は密かにガッツポーズを作る。…局部を抑えながらしゃがみ込んだ彼が呟いた「いつか絶対ぇ犯す」って言葉を聞かなかったことにして。



(120814)
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