夜景が綺麗な小高い丘は都会の喧騒から少しだけ開放される。そんな素敵な場所で、俺、青峰大輝は今から一世一代の告白を行おうとしている。目の前には愛しくて愛しくてしょうが無い彼女の姿。彼女を目の前にすると脈打つ心臓がひときわ大きく震えた気がした。

「綺麗なとこだねー」
「おおお、おう」
「…どうしたの。そんな改まった顔して」
「オレさ、お前に言わなきゃなんねえことがあんだわ」
「な…、なにを?」
「あーっと…あーーー…、一回深呼吸させて」
「う、うん」
「はあ…ふう。…一回しか言わねえから、よく聞いとけよ」
「うん…」
「お前さ、オレ」
「ああああああ!!やっぱストップ、ストップ!!!」
「あんだよ!!」
「やっぱむり!大輝がそんなに改まるとか嫌な予感しかしない!」
「あ?」
「わ、わたし、別れるとか絶対いやだからね!縋ってでも大輝のそばに置いてっていうし!むしろ、二番目でもいいから、その、別れるとか」
「…は?」
「いや、は?じゃなくて。こんな素敵なところに連れてきて、少しでも傷口を浅くしようって魂胆でしょ?」

ブチッ

「てんめ…」
「ごご、ごめん!大輝、嫌いだったよね。二番目だとかそういうの。わかってるんだけど」
「人の話を遮るなって、ガッコで先生に言われなかったか?」
「へ?」
「だいたいな、テメーも察しつくだろうがよ。つーか、気づけ!オレら付き合って何年になると思ってんだよ」
「えっと…4年?」
「ああ、そうだよ、4年だよ!そんだけ一緒にいんだから、オレがここでプロポーズしようとしてることぐらいわかんだ…ろ…、あっ」
「えっ、あっ…え…えぇ?!」
「あー…最悪、かっこわりい」
「え、ちょっと待って。え…プロポ、ええええ!!」
「うっせ、いいから左手出せよ」
「わたしオーケーしてない!ていうか、大輝からちゃんと聞いてない!」
「あ?結婚すんぞ、おら」
「なにそれ!ロマンのかけらもない!」
「じゃあ、なんだ。しねえのかよ」
「やだ!する!大輝のお嫁さんになりたい!」
「…おう」
「て、照れんな!バカ峰!」
「お前もそのバカ峰になんだよ、バーカ」


愛妻家


(120724)
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