ザーっと音を立てて降る雨に、これほど憎らしさを感じたことは無い。今朝のお天気お姉さんは雨なんて降らないと言ったじゃないか。なのに今の天候はどう考えたって、雨。雨ったら、雨。リズミカル、というよりも金盥をひっくり返したように降り注ぐ、この水玉たちを私はどうすることもなく眺めていた。

  ― 今日はデートだったのにな。

ふと頭に浮かんだ乙女な考えに、じわりと羞恥を感じた。(何考えてんだ!私!)頬が熱を持つ感覚に耐え切れず、周りに誰か居ないか確認してしまったのは内緒だ。ケータイはマナーモード。ピクリとも動かない。(当たり前、か)だけどピカリとも光らない。あぁ、私の愛しい恋人は今頃何してるのだろう。

* * *

あれから何十分たったのだろう。その後も私のケータイは着信をしらぜず、雨もやむことを知らず。むしろ雨脚は強くなるばかりだ。こうなるくらいだったらさっさと濡れて帰っていればよかった。・・・後悔してたって遅いのだけれど。

何度目かのため息に、神様は嘲笑うかのように天候を悪くする一方。いい加減連絡くらいよこせよ、と何も知らない恋人に当たってみても結果は一緒なのだが、あたらずにはいられない。

♪〜♪〜

軽快な音・・・ではなく、私の大好きなモデルさんの『電話だよー!』の声。何度も涼太にかえてくれと頼み込まれた、この着信。悪戯を思いついた子供のように、この着信音は涼太指定だったり、そうじゃなかったり・・・。


「もーしもーし」
『名前!今どこっスか?』
「どこも何も、大学の玄関で立ち往生だよーん」
『だいが・・・っ!?』
「傘ないしー、親いないしー、濡れたくないしー」
『あー、もー、わかったっス。すぐに行く。』
「どーもー」
『お礼は身体で』
「冗談は顔だけにして」


決して甘くはない時間だったが、頬の赤みと緩みが解消されないのは彼の所為だと私の心臓は知っていたようだ。



(私の思考回路もぜーんぶ、君使用なんだよ?)


「つーかさ、俺が電話しなかったらどうするつもりだったんスか?」
「んー・・・、止むまで待ってた」
「・・・明日まで降り続くらしー、この雨」
「いやん、涼ちゃん大好き。愛してるわ」
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