「コタちゃんはかわええのに大きいから、男の子やってんなあってしみじみ思うんよ?」にこにこと期待させるような言葉を彼女は吐く。うちの後輩は先輩を敬う気は無いのだろうか。主将の赤司も「小太郎」と呼び捨てるのだから、先輩の威厳は台無しだ。目の前の彼女は「コタちゃん」「玲央ちゃん」「永ちゃん」「征ちゃん」って。完全に実渕の影響だ、これは。あのクソオネエ、いい仕事してやがる。ゆるっとした笑顔を浮かべて「コタちゃーん、ドリンクあるでー」と此方を呼ぶ彼女は宛らガールフレンド。現実は先輩と後輩マネージャーだ…って、やかましいわ。さて前述の発言に戻ろう。彼女がいった「男の子やってんなあ」には期待してもいいのか、否か。異性として見られている意味での「男の子」なら万々歳だ。両腕を大きく振り上げてやろう。だがしかし、我が校には実渕玲央と言う名のオネエがいる。生物学上オスだが、奴の心にはオンナがいる、らしい。前に奴のシャワーシーンに鉢合わせた時に「コタローのえっちー!」と叫ばれた時はぶん殴ってやろうと思った、マジで。あ、そんなことはどうでもいい。兎にも角にも、目の前の小動物をだ。何を隠そう、葉山小太郎は目の前の名字名前に恋をしている、なう。一回り以上小さな体で体育館を走り回る姿とか、ハムスターが必死に小屋を駆け回る姿と瓜二つで抱きしめたい程に可愛い。そんな事したら主将から何を言われるかわからないが。「コタちゃん、きいてるん?」「え?あ、おう、聞いてる聞いてる」「ふーん。せやったら、うちがさっきなんて言うたかも覚えてるんよね?」「…へ?」名前越しの実渕はニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべている。再度言おう、あいつぶん殴りてえ。「ねーえー、わかってるんやったら言えるんちゃうのー?」ニタニタと彼女も笑う。なんなんだ、こいつらは本当に。実渕の後ろで呆れた顔する根津と赤司も何なんだ。「えー…、コタちゃん好きやでー…とか?まあそんなことありえな」「当たり!」「え?…まじ?」「すごいすごーい!玲央ちゃん、コタちゃんエスパーやで!エスパー葉山やで!」「そうねえ…でも、小太郎のことだから、ね」女子のようにきゃっきゃと声を上げる大男と小動物。いやいや、ちょっと待てよ。これってどういうことだよ。冗談のつもりだったのに、ぽっと頬紅を浮かべた彼女が可愛いなって…おい、根津も赤司も更に呆れたような顔して水道に向かうな。俺も、俺も、火照った頬を冷やしたいんだけど!


人生なんてそんなものさ/120807
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