目を瞑ることは容易いことだった。自己暗示が足りないときは、そっと両手を双眼に当てた。けれども人間、限界というものだってあるのだ。物的証拠はないに等しい。だって彼は上手いんだもの。それでも女の勘と私の記憶が言っているのだ。彼は黒だと。すぐ側に腰掛けた彼に小さく声を掛け、問う。「ねえ、浮気って楽しい?」そしたら彼はちょっとだけ目を見開いて笑うのだ、「疑ってんのか?」と。疑ってる疑ってないの問題じゃなくって、そもそも大輝は浮気してるじゃない。そう捲し立てれば、堪忍したように眉を寄せる。高圧的に出れば、男だって折れるんだってママが言ってたことは本当だったみたい。情けない顔した彼は「名前だけなんだ、大切なのは」と繰り返す。私だって大輝だけだよ。男の詭弁に過ぎない「お前が一番」にだって乗ってあげるよ。ついでに、貴方にも乗ってあげるよ。数時間後に微睡んだ空気が二人を包んだ時に、私から貴方に聞いてあげるのよ。「ねえ、



」ってね。

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120806
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