自分のことは敏感な人間だとは思わないが、鈍感な人間だとも思わない。こんなにもわかりやすい視線を送られてしまえば、否応なく分かってしまうというか。「黄瀬くん」とても大切なモノのように呼ばないでくれないか。君は春の空気にあてられて勘違いしてしまっているのだ。「きーせくんっ」大事な人のように呼ばないでくれないか。君は夏の日差しに眩まされているのだから。「ねえねえ、黄瀬くん」優しい音色で呼ばないでくれないか。君が秋の木の葉と同じように頬を染めているのは気のせいなのだから。「あ、黄瀬くんっ」嬉しそうに呼ばないでくれないか。君を包み込んだ白の世界なら、僕が黒だってよく分かるだろう。何度もなんども君を突き放したのに、その度に起き上がってくるなんて。馬鹿、なんだろうか。「黄瀬くん、ほらみて」「えー」「えー、じゃなくて」いつまでそのポジションに甘んじているつもりだろうか。彼女がそのつもりならば深く口出しはしないけれど。ニコニコと笑う彼女の恋心に気づいてしまって、もうすぐ1年がすぎる。時の流れというものは残酷だと思う。きっと彼女の中の恋心は想像以上に大きなものになっているのだろう。それでも必死に直隠しする彼女を倣って、僕はそっと口を閉じた。



君の初恋は僕がそっと殺します。

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▽螢華様
ご参加ありがとうございました。
120806
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テーマ「人外ファンタジー」
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