小さな教会で挙げられた式には両親と兄弟達しか呼ばなかった。彼がどうしても恥ずかしいというのだ。別に互いの友人を10人ほど呼ぶぐらい良いだろうと提案したのに、頑なに首を縦に振らない彼はなんというか。そんな中、共通の友人達から一枚のDVDが届いた。良かったら披露宴で流してください、だと。彼には伝えずに披露宴のプログラムにぶっこんでもらうことにする。きっと言っちゃったらNOを突き出されてしまうもの。さてさて、本日はそんな披露宴当日。式とは違い、少しだけ人数が増えた其処には、彼ら友人の姿はない。まあ増えたといっても互いの親戚程度だ。そんな中始まる、彼からか頂いた映像。目を見開いた彼に、内心『よっしゃ!』なんてイタズラが成功した子供みたいな感情を抱いたのは内緒だ。


青峰っち、名前っち、結婚おめでとう!いやー、一時はどうなることやらと思ってたんスよー?いい加減、結婚しろよーって言っても「プロポーズはされたいの」とか「私から言うのは癪だから」とか名前っちは言っちゃうし。青峰っちも青峰っちで、バスケがーバスケがーって名前っちに甘えっぱなしで…。こいつら結婚する気あんのかよ?!って正直思ってたっス。でもまあ?結局は青峰っちがプロポーズしたみたいで。披露宴は呼ばれなかったっスけど、二次会じゃいろいろ聞くっスよー!それじゃあ、これからも末永くお幸せに!黄瀬涼太でした。

峰ちん、名前ちん、結婚おめでとー。結局結婚してんじゃーん。名前ちん、ずーっと峰ちんからプロポーズされないの悩んでて、挙げ句の果てには「来年までに大輝からプロポーズされなかったら、敦くんと結婚する」とか言っちゃってたのにー。峰ちんに名前ちん取られちゃったしー。あーあ、俺も名前ちんのウェディングドレス見たかったー。…まあ、いいや。二次会にウェディングケーキもってきてねー。ふたりともおめでとー。

青峰、名字、御結婚おめでとうございます。…ようやく結婚する気になったのだな。以前、名字と街であった時にエンゲージリングを見ながら「私の指に収まるのはいつだろう」と嘆いていたのも懐かしい思い出だな。あれから幾月かでまさか現実になるとはな。よかったな、名字。これからは夫婦として2人で歩んでいく自覚をしっかり持つのだよ。ではまた、二次会で。

大輝、名前、結婚おめでとう。2人がようやく結婚すると聞いて、僕も肩の荷が降りたところだよ。大輝にいつするのかと聞いても「アイツには伝わってるから大丈夫だ」なんて根拠のないことを抜かしていたからな。本当は今日も名前のウェディングドレス姿に涙を流して、手放しで喜びたいところだろうな。僕も名前のウェディングドレス姿が見たかったよ。二次会では色々と話を聞かせてくれよ。本当に2人共おめでとう。

青峰くん、名前さん、御結婚おめでとうございます。おふたりが結婚すると聞いて、なんだかホッとしました。正直なところ、おふたりみてるとヤキモキしていたのですが…本当に良かったです。もう青峰くんが酔っ払って、僕を名前さんと間違えながら「結婚してくれよう」なんて情けない姿を見せることもないんですからね。あ、これって内緒でしたね。すみません、口が滑っちゃいました。二次会でも直接お伝えしますが、改めておめでとうございます。末永くお幸せに。


映像が流れる間、彼の顔は青くなったり赤くなったり忙しなかった。それでもその顔には満更でもない笑みが終始浮かんでいて。「よかったね」なんて告げれば「お前、知ってただろう」だって。バレちゃったかーなんて舌を出して笑えば、コツンとおでこを突かれる。沢山の人に祝福されながら想いを馳せるのは、あの日、私にプロポーズした彼のこと。「いい加減、結婚するかー」なんて素っ気無い態度と呟くように吐かれた台詞に涙したのも、ずいぶん昔のことのように思えた。今こうして、彼の隣に笑って居れること。それが何よりも幸せだと声を大にして言いたい。



今日は終わりのはじまりの日


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