※本誌ネタバレあり

あの背中で一体どんなことを背負ってきたのだろうか。副部長としての威厳、先輩の意地、最上学年のプレッシャー。周りより小さなその背中にそっと寄り掛かれば、ふわり香る彼の香り。目を閉じて大きく深呼吸して、彼の生命のリズムを感じる。「…あんだよ」「別に」「あっそ」泣いてるんだろうか。ずずっと啜られた鼻音が嫌に響く控え室。私はマネージャーとして彼らを何処まで支えてこれただろうか。ツンっと鼻の奥が弾かれたように痛い。じわりと滲んだ涙が零れないように視線を上に向ける。「あーあ…、負けちまったわ」「知ってるよ、見てたもん」「テッペン見せてやれなくて悪ぃ」「…謝んな。みんなが頑張ってたの一番近くで見てたもん」「そうだったな」抑えきれなかった涙がスッと頬を伝う。乱暴にそれを拭えば「泣いてんのかよ」と一言。そいつはお互い様ってやつじゃないか。そんな思いも込めて、寄りかかっていた背中に頭突き。額に感じた熱が、心を侵食していく。「泣いて、ない」「嘘つけバーカ。バレバレだ」「泣いて、ないもんっ…」「へーへー」「…悔しいね」「…そうだな」頭に乗っけられた優しさが胸に染みる。白いタオルでゴシゴシと目尻を擦れば「腫れるぞ」だって。あーあー、すでに目を腫らしちゃった人に言われてちゃあ世話ないね。

のない宇宙でねむる

「来年は、みんな立ててたらいいね」「見に来んべ、来年も」「そうだね、絶対に」


(120804)
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