珍しく真太郎が読書をしながら、船を漕いでいる。かくん、かくん。リズムよく項垂れる首が歳相応に可愛らしくて。同い年とはいえ、身長も高く大人びている彼は、こう言っちゃ悪いが高校生に見えない。そんな彼も眠ってしまえば、こんなにも可愛い。これが彼女の特典ってやつだろうか。かけられたままの眼鏡を外し、じっと観察する。あー、本当にした睫毛長いな。ずるいな。私の下睫毛なんて、お化粧というズルをして真太郎と同じ長さなのに。憎たらしさも込めながら、そっと目尻に唇を落とす。「なにしてるのだよ」「…バレました?」「生憎、寝込みを襲われる趣味は持ってないのだよ」「まるで人に寝込みを襲う趣味があるみたいな言い方するのね」眼鏡をかけていない真太郎の眉がより一層顰められる。なにも見えないと訴えかけるような顔にふふんと笑みを漏らせば、後頭部ごと彼に近づけられる。「返せ」「いや」「ないと見えないといっているだろう」「ない方がキスしやすいよ」添えられた手から頭を離し、リップ音を立てて唇を落とす。あれ、真太郎ってば耳まで真っ赤だ。「…痴女が」「酷い照れ隠しだね」「人に跨りながらキスする奴が痴女じゃないわけないのだよ」「その痴女が好きなくせに」意地悪しすぎた。そう思い、すっと眼鏡を返せば眉間の皺が幾分か緩和される。癖になっちゃうよ。そんな想いも込めて眉間を撫でれば、くすぐったそうに顔をずらす彼。そんな所も、全部、好きだ。あ、今なら幸せの白糖が吐けるかもしれないな。こんなにも甘い幸せを二人占めしてしまっていいんだろうか。





それは恋に落ちた私の瞳が映しだした世界だ。


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▽四島様リクエスト
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