※一部捏造あり
今年から新戦力も加入して、ますます連覇への道が開けた。新入生の赤司は4番をつけることを条件に洛山に来たというから驚きだ。今となってはそれも頷ける事実。今回のWCも滞り無く準決勝までやってこれた。電車に揺られ会場を目指す中、しばらくはイメージトレーニングでも行おう。そう考えていた時、右横から小さな衝撃。
「みーぶーちーれーおー!」
「った…、何すんのよ!」
大事な試合前だというのに。そんな気持ちを込めて、痛みを受けた方向を睨みつければ、そこにはいつぞやの小さな影。へらへらと笑って腰に抱きつく様は1年前と変わりない。
「ふふふっ、れーおくんのにーおいーっ」
「まーたあんたなの…んもう、離れなさい」
「えー。玲央くんとこの応援に行こうと思って電車に乗り込んだら玲央くんが居て、思わずテンション上がっちゃった私にそれをいうー?」
力の抜けるような顔で笑う彼女に呆れたようなため息しか出てこない。頭1つ分は優に小さく、間延びしたような喋り方なのに、これで同い年だというか驚きだ。中学時代はよくこうして出かけたりもしていたが、京都に移ってからは全くだったなと思い馳せる。
「今年も優勝できそうー?」
「そうねー、今年は征ちゃん…あ、新しい主将なんだけど、その子がいるから間違いないんじゃないかしら」
「ほんとにー?!じゃあ今年もクリスマスは一緒に過ごそうねー」
簡単にクリスマスの予定なんて、こんな自分と作ってしまっていいのだろうか。そんな思いも込めて、肩よりも下に位置する頭をぽすぽすと撫でる。それに気をよくしたらしい彼女はさらに顔を埋めてくる。あーあー、ここ、電車なんですけど。
「玲央くん玲央くん」
「はいはい」
「今年は恋人みたいなクリスマスがいいな」
「あら、あんたとはそういう関係じゃないはずよ」
「えー…、じゃあー、そういう関係になろうよ」
絶対的な身長差の前では自然と上目遣いになる仕様である。上向きの睫毛と女の子らしい目元は本来の男性心をくすぐるというか。小さく溜息をついて了承の言葉を吐けば、腰元の細い腕に力が込められる。なんてご都合主義な展開なのだろうか。ルンルン気分で鼻歌を歌い、ジャージに額をすり寄せる彼女はそんなこと一切気にしていないようだ。まあ、中学在学時から彼女のことが気になっていたのは事実なのだから、こういう展開も有りなのかもしれない、なんて。
溺れたての土曜日
「玲央くん好きー」「はいはい」
(120727)