「あ、春日じゃん」
「おー・・・」
サークルの合宿中、もう時計の短針は午前1時を指していると云うのに、あたしは暑苦しい事も有りなかなか寝つけなかった。そんな中近くの海まで来ると、高校の同級生だった春日と偶然にも再会した。突然の再会で驚きはしたが、嫌ではなかった。別にあたしは春日のことは嫌いじゃなかったし、むしろ逆で。好意を抱いていたから。
「何してんの?」
「春日こそ・・・、」
「あたしはサークルの合宿中。で、寝つけなくてここに来た。以上。」
「普通、女がこんな時間に出歩くかよ。」
「生憎、ごく普通な女じゃないもんで。」
お互いに憎まれ口を叩き、笑いあった。そして春日は何でここに来たのか?と聞くと、俯きざまに力なく呟いた。
「フラれちゃったんだ・・・、彼女に。」
また、か弱く笑った。月明かりがそんな春日の顔に追い討ちをかける様に、愁いを帯びて降り注ぐ。
「いつにも増して本気だったしね。で、ふらーっと、どっか行きたくなってさ。だからこれは・・・―」
「心を癒す一人旅ですか。」
「そんなもんかな、」
その後は二人とも何も喋ることなく、ただ波の音を聞きながら、ぼーっと座って海を眺めていた。
帰り際、春日はあたしにこう言った。
「名字が居てくれて良かった。一人だったら、確実に泣き喚いて近所迷惑になる所だったから」
なんて、嬉しい言葉をお土産に。
この恋が終わる瞬間を