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※D置き場に置いてある「タンザナイトがこちらを見ている」のおまけ
※ハロルドとジューダス(とリオンとルーティとカイル)の瞳の話




鏡士陣営のアジトにて。私はいつかのようにジューダスの仮面を両手で捕まえてその仮面の奥の奥を覗き込んでいた。ジューダスは以前のように抵抗することも無く、面倒臭そうに、或いは諦めたように眉を寄せるだけ。よしよし、いい傾向である。
さて、今日も今日とて私がジューダスの瞳を見ているのには理由がある。


「ねえ」

「なんだ」

「アレはあんた?」


ジューダスは"アレ"が何を指すのかすぐにわかったのだろう。その頭の回転の早さ、やはり私の子孫かもしれない。なんてことを言ってぐふぐふ笑う。ジューダスは私の笑い声に眉間に刻んだ皺を深くして、睨むように私を見た。


「……そうだ」


絞り出したその声に私はもう大満足。大体、前から思っていたけれどその仮面、あんまりにも意味がない。ジューダスと彼、隣に並ばなくたってわかる。瓜二つ過ぎて双子だという推論も立たない。どう見てもどう考えても同一人物。身体的特徴は何もかもが同じ。解剖するまでもない。


「じゃあその隣にいるあの子は、あんたの姉ってこと?」
「…………そうだ」


そしてそんなジューダスの過去の姿、リオンの隣にいる少女。これまたリオンにもジューダスにもそっくりで、遠目でも紫色の瞳をしていることがわかる。黒髪で紫の瞳。ソーディアンマスター。目の形や耳の形に類似点。鼻の形は少し違う。体型や性格にも似ている点がいくつも認められる。
これは間違いなく姉弟。そう思って問い掛けたそれには、長い長い沈黙の後、溜息混じりに答えがあった。天才に間違いはないのである。


「ふうん」


彼女とジューダス或いはリオンに認められる類似点を私とジューダスの類似点に重ね合わせる。当然のごとくぴたりと当てはまる。つまり、私の性質と彼女の性質も限りなく似ているということだ。
にやりと笑った私が何を言わんとしているか察したのだろう。ジューダスは再び溜息をついて、まだ諦めてなかったのか、と言った。


「諦めないわよ!もしあんたと私が血縁関係にあったとして!それはつまりあんたの姉とも私は繋がっているということで!私の遺伝子がどう変化して千年もの間受け継がれてきたのか調べるチャンスじゃない!サンプルが三人もいるのよ!これを逃す手は無いわ!!」


一息にそう告げれば、わかったから手を離せ、とジューダスが平坦な声で言う。私はその仮面から手を離し、横に並んで何事かを話すリオンとその姉、ルーティに狙いを定めた。さて、どうやって彼らの血を入手すべきか。


「ハロルド」

「なに?」

「お前は気づいてないのか?」


ジューダスの神妙な顔に思わず思考を止める。私の紫とジューダスの紫がしっかりと合う。ジューダスはリオンとルーティを視界に収めて、それからふと遠くの方に視線を投げた。釣られて視線を追いかける。カイルとリアラが私たちに向かって手を振っていた。


「なにが?」


ジューダスは笑う。小馬鹿にしたようなその笑い方に、また珍しいことがあるものだ、と思う。小馬鹿にしたような、つまりは悪戯っぽい。悪ガキのようなその笑みに、私は首を傾げて続きを待つ。ジューダスはカイルを見て、私を見て、それから。


「ルーティは確かに僕の姉だ。……そしてカイルは、ルーティの息子でもある」

「カイルーっ!ちょっと血液採取させてー!」




タンザナイトはこちらを見ない




20200220


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