82.小白たちとご飯

三月も後半に入って、少しずつ暖かい日が訪れるようになった。无限大人と小黒は、張り切ってキッチンに籠っている。小白ちゃんに美味しいものを作って持て成すんだそうだ。二人が奮闘している間、私はリビングで小白ちゃんのお相手を買ってでていた。
「次はどっち行こうか?」
「えっとね、あ、あっちに何かありそう!」
ゲーム端末をそれぞれ持って、協力プレイで遊んでいた。二人とも、対戦はあまり得意じゃない方だ。のんびりゲーム世界を歩いて、素材を集めて料理を作るこのゲームは小白ちゃんと遊ぶにはちょうどよかった。
「山新が教えてくれたんだけど、山新はすぐに飽きちゃって。でも私はちょこちょこ遊んでたんだ。このキャラクターがかわいいでしょ」
小白ちゃんはこのゲームに登場するモンスターのようなキャラクターを示す。ちょっとユニークだけれど、ちまちました動きが可愛らしかった。
「あ、あの薬草レアじゃない?」
「ほんとだ! 採ろう!」
崖の近くに輝く大きなアイテムを見つけて、二人で駆け寄る。入手するにはスキルが必要だ。二人合わせてギリギリだったけれど、なんとか入手できた。
「やった! これですごい料理作れるね!」
小白ちゃんはさっそく手に入れたアイテムで作れる特別な料理を作った。その料理を食べるのはあのモンスターだ。小白ちゃんは出来上がった料理をモンスターに食べさせた。
「いっぱい食べて、大きくなあれ!」
料理を食べ終わったモンスターは、本当に大きくなった。見た目も少し変わったみたいだ。
「うわ! おっきくなった!」
「なんか、そうなるんだね……」
小さい分可愛く見えていたポイントが消えてしまって、ユニークさが強調され、思っていた成長と違う方向に行ってしまったなと思う。
「ははは! すっごくかわいいー! つよそう!」
小白ちゃんは嬉しそうにモンスターの回りを自分のキャラクターで走り回った。小白ちゃんにとってはかわいいみたい。ふと、キッチンの方からいい匂いがしてきて顔を上げた。
「できたよー!」
同時に、小黒がドアを開けて、料理を持って現れた。无限大人も出てきて、テーブルに料理を並べていく。
「わ! いい匂い!」
私たちはゲームを終了して、テーブルに向かった。
「すごいたくさん作ったね」
「へへ! 美味しそうでしょ」
小黒は自慢げに、料理を並べていく。あれから、无限大人はどんどん料理の腕を上げて、あるとき小黒が小白にも食べさせたい、と言うので、こうして小白ちゃんを招いて振る舞うことになった。自慢の師父の手料理を大切な友達に食べてもらうことがとても嬉しいようだ。
「いただきます!」
小黒の真似をして小白ちゃんまで手を合わせてそう言うので驚いた。
「小黒がよくやってるから、教えてもらったの! 小香さんが教えたんだよね」
「そうなんだ。ふふ。なんだか嬉しいな」
何気ない習慣だけれど、人を伝って他の人に伝わっていくのを見るのは不思議な感覚だった。
「わ! おいしーい!」
さっそく一口食べて、小白ちゃんは目を輝かせる。
「でしょ! でも、ちょっと前までほんとに下手だったんだよ!」
小黒はご機嫌に、自分も食べながら小白ちゃんがぱくぱくと料理を食べるのを見ていた。
「あはは、信じられないよ! すごく美味しいです、无限大人!」
「口に合ったなら、よかった」
无限大人は微笑みを浮かべて答える。人にご飯を食べてもらうとき、无限大人は本当に嬉しそうな顔をすると思う。
「小香に出会えてよかったね。じゃなきゃ、ずっと下手なままだったよ」
小黒は口角を上げて、悪い笑みを浮かべてみせる。无限大人は肩を竦めた。
「ああ。いい師父を持ったよ」
「師父ってほどじゃないですよ」
私はそれほど役に立ってない。ごくごく基本的なことを教えたくらいだ。
「いいなぁ。素敵だなぁ……!」
そんな私たちを見て、小白ちゃんは目をきらきらとさせる。
「ただ好きってだけじゃなくて、お互いに尊敬してるの、すごく素敵だと思う!」
「尊敬なんて大袈裟だよ。私は无限大人を尊敬してるけど……」
小白ちゃんはいつも、彼女が持つ中で一番大きな表現で話してくれる。純真でまっすぐすぎて、くすぐったい。
「私もしているよ。君のことを、尊敬している」
「はぅ……そ、そうですか……」
无限大人にわざわざ明言されてしまって、何も言えなくなってしまう。
「ふふふ。小香さんは照れ屋さんだね!」
「あはは、そうなの」
小白ちゃんにずばり言われてしまって、笑い返すしかなかった。
无限大人の料理に舌鼓を打ちながら、楽しく話をして春の暖かな午後を過ごした。

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