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お夕飯にはテーブルを二つ並べて、みんなで囲んで座った。テーブルには所狭しと料理が並べられる。羅さんとおじいさんが腕を奮ってくれた料理だ。 「さあ、みんなたんと召し上がれ!」 おじいさんが両手を広げてそう言うと、お腹の空いていた子供たちはすぐにお箸を取って食べ始めた。 「ほほほ。今年は賑やかになったのう」 頬を膨らませてご飯をかきこむ子供たちに、おじいさんは嬉しそうに笑った。 「小香もどうだね。お口に合うかな」 「はい! とても美味しいです」 「よかったよかった。无限大人、一杯いかがですかな」 「いただきます」 おじいさんは私の答えに満足そうに頷くと、无限大人にお酒をすすめた。羅さんと旦那さんも手元に杯を置いている。 「小香は? 呑めるかな?」 「はい。少し」 「では改めて、乾杯!」 私も杯をもらって、上に持ち上げ、乾杯をしてから杯を呑み干す。少し強いけれど、なんとか呑めた。 「大丈夫か?」 「これくらいなら平気です」 无限大人が心配するので、そう答える。結婚式のとき、強めのお酒をすすめられて呑んだことを思い出した。あのときのお酒はかなり強かった。でも今回は、顔が赤くなるほどではないと思う。无限大人も私の顔を見て安心したように眉を少し下げた。 「お二人は結婚したばかりだとか」 おじいさんは无限大人の杯にお酒を注ぎながら話しかけてくる。 「はい。去年の九月です」 「ほう。すると、まだ四ヶ月くらいかな。お熱い時期じゃのう」 むふふ、とおじいさんは顔を赤らめて笑う。お熱いなんて言われて照れてしまった。 「でも、なんだかこの二人は熟年夫婦って雰囲気もあるのよねえ」 お魚を解しながら、羅さんが私たちの顔を見比べる。私は无限大人の顔を見た。そうなのかな。无限大人は私と目を合わせて、微笑む。この微笑みは、何度向けられても、心臓がどきりとしてしまう。 「そうじゃのう、无限大人が落ち着いてるからの。こんな若い嫁さんをもらうとは、なかなかやりますなあ!」 うりうりと无限大人に肘を押し付けるような仕草をするおじいさん、もしかしたらもう酔ってるのかもしれない。无限大人はマイペースにご飯を食べる。 「年の差、なんかすごい開いてるんでしょ? 旦那さん四百歳だっけ? 大変なこととかないの?」 羅さんはあっけらかんとそんなことを聞いてくる。大変なことがないとは言わないけれど、なんだかんだ、普段の生活で意識することはほとんどない。 「ないですね。无限大人は現代のことにも詳しいし、特に困らないです」 「旦那さんの方も?」 「ええ。問題はないです」 无限大人はさらりと答える。 「他には? 性格が合わないとか、気になるところとか、直して欲しいところとか、一緒に暮らすようになったらひとつやみっつあるでしょう」 羅さんはさらにずいっと身を乗り出してきた。私は少し考えて答える。 「ないですね」 「ないな」 无限大人もほとんど被せるようにして答えた。なので思わず聞いてしまった。 「ほんとですか?」 「ああ。ないよ」 はっきり言われてしまうと、でも何かあるんじゃないか、と逆に不安になってきた。我慢させていたら申し訳ないし。しかし无限大人が嘘をついているという様子もない。そういえば、嘘をつかれたこともないかも。いろいろ考えながらなんて言おうか迷ってじっと顔を見つめるだけの私に无限大人は吹き出す。 「ふふ、そんな困ったような顔をして」 「だって……私は无限大人みたいにできる人じゃないから、足りないところがたくさんあるのに……」 「私が君にここが足りないなんて言った?」 「いいえ……」 「私にとっては、充分すぎる人だよ、君は」 「……っ!」 また无限大人はさらりとそういうことを言う。胸がいっぱいになってしまって、食欲が少し減ってしまった。 「あらぁ、お熱いこと。羨ましいわねぇ」 羅さんに呆れられてしまって、慌てて繕おうとするけれど、何を言えばいいかわからなかった。 「ははは! 夫婦円満でなによりじゃ! さ! 呑みなさい!」 おじいさんが大きな声で笑って、お酒を注いでまわる。私も照れたのを誤魔化すために少し多めに呑んだ。 ← | → |