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「やあ、よく来た!」 羅云飛さん――小白ちゃんのおじいさんが、到着した私たちを歓迎してくれた。 「初めまして、小香と申します。よろしくお願いします」 「无限といいます。しばらく世話になります」 「小香に无限大人、お話はよく聞いております。どうぞ自分の家と思ってくつろいでくだされ」 おじいさんは髭の奥で親しげに笑った。荷物を車から下ろして、家の中に案内してもらった。古い田舎の平屋だ。なんだか異国情緒を感じる。 「狭い部屋だが、何か必要なものがあれば遠慮なく言いなさい」 「ありがとうございます」 しばらく无限大人と二人、荷解きなどをして、長時間のドライブで固まった身体を休めた。小黒は小白ちゃんと同じ部屋だ。 「素敵なおうちですね。おじいさんも優しそうで」 「ああ。いいところだな」 ここに来るまでに通ってきた道は長閑な田舎そのもので、のんびりした時間が流れていた。 「そろそろお夕飯の支度するのかな。聞いてきます」 せっかくだから手伝おう、と思って厨の方へ向かう。ちょうどおじいさんと羅さんが話しながら支度を始めていた。 「お夕飯ですか? 私も手伝い……」 「いやいやいやいや! お客さんは座っておいで」 「そんな気を使わなくていいのよ小香! ゆっくりしてなさいよ」 ます、と言い終わる前に、二人は同時に口を開いて手を振った。 「では、お言葉に甘えて……」 無理に言い張るものでもないので引き下がることにして、小黒の様子を見に行った。 「小黒、小白ちゃん」 部屋を覗くと、二人と一緒に阿根くんもいた。 「お夕飯これから作るから、もう少しかかるみたいだよ」 「そっか。お腹空いたなぁ」 「もう少し待ったら、食べきれない量が出てくるよ」 阿根くんが小黒に冗談めかして言う。厨の二人のやる気を思い出すと、確かにそうなりそう、と頷いた。 「小香さん、ここ、夜は星空がすごく綺麗なんだよ! 无限大人と一緒に見てくるといいよ」 小白ちゃんが無邪気な笑みを浮かべて教えてくれた。 「そうなんだ! それじゃ、ご飯までの間に、ちょっとお散歩してこようかな?」 「うん! 行ってらっしゃい!」 三人が笑顔で手を振ってくれる。私は手を振り返し、部屋に戻って无限大人を散歩に誘った。 「もうすっかり暗いな」 无限大人は窓の外を見て、立ち上がった。二人で家の外に出る。見上げてみると、さっそく星空が目に入った。よく晴れていて、美しい空だ。 「わあ。ほんとだ。すごく綺麗」 「いい天気だ」 吐いた息が白く染まる。しっかり着込んできたけれど、少し寒い。歩いていれば少しは温まるだろう。 「やっぱり、都会とは全然違いますね」 「そうだな。こういう空は、年々減っているよ」 「そうなんですね……」 无限大人は任務であちこちに行くから、実感としてあるのだろう。空を見ながら、並んで家の周囲を軽く歩く。隣を歩く无限大人の手に手を伸ばして、指を絡めた。少しひんやりする。无限大人は優しく握り返してくれた。 木々の方から、白くて丸い、ふわふわしたものが飛んでくる。それは私たちを囲むように広がった。 「これは……」 館でも時折目にする。霊質が豊かな土地の証だ。 「歓迎してくれているようだな」 无限大人は微笑んでそれらを見上げた。なんだか彼らも笑っているような気がした。 ← | → |