72.聖夜

「ただいま!」
「おかえりなさい」
二人は思ったより遅い時間に帰ってきた。けれどちょうどテーブルのセッティングが終わったところだ。
「ご飯できてるから、手を洗ってきて」
「はーい!」
二人は荷物を置いてコートを脱ぐと、手を洗いに行った。お箸を置いて、二人と一緒に椅子に座る。
「わあ! ごちそう山盛りだ!」
「今年は中国料理中心にしてみたの」
以前よりレパートリーも増えたので、洋食を減らした。二人とも、やっぱり一番好きなのは中国料理のようだったから。无限大人もさっそくお箸を手に取った。
「美味そうだ」
「さあ、食べましょう」
「いただきまーす!」
「いただきます」
クリスマスイブの今日は休みで時間があったので、少し前からどんな料理を作ろうか考えて、たくさん作ろうと決めていた。そして今、テーブルの上にたっぷりの料理が並んでいる。
小黒と无限大人はどんどん食べてくれる。時間をかけて作った料理があっという間になくなっていくのがいっそ小気味いい。
「美味しいですか?」
「おいしい!」
「美味いよ」
黙々と食べる二人に聞いてみると、元気な声が返ってきて笑顔が零れた。
「ケーキも作ってあるんですけど、食べれるかな」
いまさら、料理を作りすぎたかもと心配になる。けれど二人はまったく問題ないと顔を上げた。
「もちろん、食べれるよ!」
「ああ。楽しみだ」
「ふふふ。よかった。ほんとに作り甲斐がありますね」
二人に料理を作るようになってから、我ながら腕が上がったと思う。やっぱり自分一人だけの分を作るより、誰かの―――大切な人のために作る方がよほどやる気が出る。
時間をかけて談笑しながら料理を平らげ、ケーキも食べ終わって、落ち着いたところでプレゼントを交換した。
「見て! ぼくはこれ!」
小黒は包装をびりびりと破いて箱を開けて、何を買ってもらったか見せてくれた。
「かっこいい飛行機だね!」
「よく飛ぶんだよ! ぶーん!」
片手で飛行機を持って、立ち上がって飛行機を飛んでいるかのように動かす。そんな子供らしい行動が微笑ましかった。
「小香には、これを」
「わ、ありがとうございます」
无限大人からかわいくラッピングされた袋を渡され、両手で大事に受け取る。袋を破かないようにリボンを外して袋を開けると、柔らかな色合いのマフラーと、似た色の手袋が入っていた。
「わあ、かわいい!」
手に取ってみると、ふわふわして触り心地がとてもよかった。
「つけてみて」
无限大人に言われて、マフラーを首に巻き、手袋を嵌めてみた。
「あったかい。どうですか?」
「よく似合っているよ」
「小香かわいいね!」
「ありがとうございます」
「小黒と一緒に選んだんだ」
「あら。小黒もありがとう」
「えへへ。小香に似合うと思ったんだ。思ったとおりだね、師父!」
无限大人と小黒は成功、と言うように顔を見合わせて手を叩いた。
「无限大人には、これを」
手袋を外して、私からの贈り物を渡す。无限大人は手の平大の箱を受け取り、開いた。
「万年筆か」
「悩んだんですけど、それなら実用性もあるかなって」
「いつも持ち歩くよ」
无限大人は万年筆を手に取り、握った感触を確かめている。
「いいペンだ」
「気に入ってもらえたらよかったです」
无限大人はあまり物を持たないから、贈り物をするときはいつも悩む。今回はいい物を選べたんじゃないかと思う。
クリスマスを一緒に過ごすのはこれで二回目だ。毎年、プレゼントにきっと頭を悩ませるのだろうけれど、それも楽しみだ。

|